◇水嶺のフィラメント◇
「いいね? 僕はずっと君の傍にいる。それをどうか忘れないで。ナフィルの民の──「砂の民」のためにも、今は国王代理として国を支えることを優先するんだよ」
──レイン……?
ナフィルの民をわざわざ「砂の民」と言い直したことに違和感を覚えた。
アンは疑問を口にしようとしたが、再びのキスで遮られてしまった。
「──はい」
やがて自由にされた唇で、力強く応えてみせる。
あたかも敵陣に乗り込まんという恋人に、これ以上不安な姿など見せたくはなかった。
きっと次に会う時は共に笑顔で。一点の曇りもなく、清廉として。
その「次」がいつになるかは分からずとも──。
「レイン、本当にありがとう。どうか無理はしないで……あの……愛しています」
「僕もだよ、アン。ずっと愛してる」
最後に二人は愛を誓った。
薄暗がりの屋根裏部屋にひらり、艶やかなブロンドとベージュのマントが翻って、涼やかな微笑みは一瞬の内に闇へと消えた。
──レイン……?
ナフィルの民をわざわざ「砂の民」と言い直したことに違和感を覚えた。
アンは疑問を口にしようとしたが、再びのキスで遮られてしまった。
「──はい」
やがて自由にされた唇で、力強く応えてみせる。
あたかも敵陣に乗り込まんという恋人に、これ以上不安な姿など見せたくはなかった。
きっと次に会う時は共に笑顔で。一点の曇りもなく、清廉として。
その「次」がいつになるかは分からずとも──。
「レイン、本当にありがとう。どうか無理はしないで……あの……愛しています」
「僕もだよ、アン。ずっと愛してる」
最後に二人は愛を誓った。
薄暗がりの屋根裏部屋にひらり、艶やかなブロンドとベージュのマントが翻って、涼やかな微笑みは一瞬の内に闇へと消えた。