◇水嶺のフィラメント◇
[5]巡り出した星 〈M〉
「フォルテ!?」
立ちはだかっていた後ろ姿が揺らめいて、一瞬の内に崩れ落ちた。
アンは咄嗟に両腕を伸ばし、何とかギリギリ倒れる前にその身を受け止めることが出来た。
「メーが大変なご無礼を! ボ、ボクが介抱しますので!」
パニは振り向くと同時に駆け戻り、アンに抱えられたフォルテを引き取った。
お陰で開かれた視界の先に、ヒヤヒヤと状況を見守るパン屋の店主と、そして──「メー」と呼ばれた副首長がくっきりと映り込む。
「あらあら、失神したいのはお姫サマの方でしょうに? 侍女が倒れちゃうなんてとんだ笑い話ね!?」
「メー!」
パニから諫められても、唇を閉じるつもりはないらしい。
メーは「面白そうだ」という目つきでツカツカと歩み寄り、アンもその瞳と相対するために、屈めていた身体をゆっくりと起こした。
燃えるような赤毛のウェーブと、小麦色の肌に濃いめの化粧が妖艶な美女だ。
レインやパニと同じくリムナトの外套を纏っているが、肩に掛けられているので全身が見て取れる。
腕組みの上の胸元は露出度が高く、同性でも目のやり場に困りそうなボリュームを見せつける。
ヒールの高い編み上げブーツの所為か、鼻先まで近付いたメーは、アンには見上げる必要があった。
立ちはだかっていた後ろ姿が揺らめいて、一瞬の内に崩れ落ちた。
アンは咄嗟に両腕を伸ばし、何とかギリギリ倒れる前にその身を受け止めることが出来た。
「メーが大変なご無礼を! ボ、ボクが介抱しますので!」
パニは振り向くと同時に駆け戻り、アンに抱えられたフォルテを引き取った。
お陰で開かれた視界の先に、ヒヤヒヤと状況を見守るパン屋の店主と、そして──「メー」と呼ばれた副首長がくっきりと映り込む。
「あらあら、失神したいのはお姫サマの方でしょうに? 侍女が倒れちゃうなんてとんだ笑い話ね!?」
「メー!」
パニから諫められても、唇を閉じるつもりはないらしい。
メーは「面白そうだ」という目つきでツカツカと歩み寄り、アンもその瞳と相対するために、屈めていた身体をゆっくりと起こした。
燃えるような赤毛のウェーブと、小麦色の肌に濃いめの化粧が妖艶な美女だ。
レインやパニと同じくリムナトの外套を纏っているが、肩に掛けられているので全身が見て取れる。
腕組みの上の胸元は露出度が高く、同性でも目のやり場に困りそうなボリュームを見せつける。
ヒールの高い編み上げブーツの所為か、鼻先まで近付いたメーは、アンには見上げる必要があった。