◇水嶺のフィラメント◇
「黙って……? ではどうしてそのような嘘を?」

「メーはヤキモチを焼いたんです。レインさまがアンさまのため、ボクたちに協力を求めにきたことで。レインさまがどれほどアンさまを大切にされていらっしゃるのか、以前から知っていた筈なのに……」

「はんっ! レインのためなら何だってしてあげるけどね! どうしてあたいがレインの恋人のために、リムナトくんだりまで来なくちゃいけないのさ!?」

「メー!」

「あぁ~うっさい!」

 パニは肩を(いか)らせながら、腰掛けたままのメーに迫った。

 真上から説教を垂れるパニと、煙たそうに耳を(ふさ)いで目を(つむ)るメーは、まるで上下逆転した姉弟のようだ。

 その光景を再び微笑ましく見詰めて、アンは先刻のメーのように深い息を零した。

「ありがとう、パニ。でももうこれ以上は気にしないで。やっぱり謝らなければいけないのは、あたしの方みたい」

「アンさま?」

 静々とメーの元に寄り、憤然と見上げるメーに視線を落とす。

 やんわりとした面持ちのまま、目の前の彼女に深く頭を下げた。


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