◇水嶺のフィラメント◇
「あたいがフランベルジェから山越えした時には、もう厳しい検問が始まってたんだ。それでも入国はまだスムーズな方だよ。だけど出国はかなり難しい。まるで山賊にでも身ぐるみ剥がされたみたいな行列が出来てたっけ──まぁあたいは傍から覗いただけで、抜け道から不法入国しちゃったけどね~! ──となればだ? 北境のルーポワもきっとおんなじ状況だろうし、ナフィルの国境に到っては、もう出国禁止令なんかも出ちゃってたりするかもよ!?」
「……」
アンはメティアの見解を噛み砕きながら、無言で中空の一点を見詰めていた。
こうなる可能性は示唆出来た筈であるのに、何故レインは自分たちの出国まで王宮に戻ることを遅らせなかったのか?
あと一晩待てなかった理由があるというならば── 一体それは?
「てなワケで、ともかく支度を整えようじゃないか。アン~、レイン好みの一張羅、見つけてきたからさ! 早くあたいにもお披露目してよん」
「え? ──っと、あの……レイン好み、って……?」
隣のメティアへ振り返る前に、アンの背筋には不穏な予感がほとばしっていた──!

「……」
アンはメティアの見解を噛み砕きながら、無言で中空の一点を見詰めていた。
こうなる可能性は示唆出来た筈であるのに、何故レインは自分たちの出国まで王宮に戻ることを遅らせなかったのか?
あと一晩待てなかった理由があるというならば── 一体それは?
「てなワケで、ともかく支度を整えようじゃないか。アン~、レイン好みの一張羅、見つけてきたからさ! 早くあたいにもお披露目してよん」
「え? ──っと、あの……レイン好み、って……?」
隣のメティアへ振り返る前に、アンの背筋には不穏な予感がほとばしっていた──!
