◇水嶺のフィラメント◇
◇ 第二章 ◇

[6]救われた心

 それから数分後。

 雨が上がったのだろう、暖かみに包まれ始めた屋根裏部屋には、自分の姿に動揺を隠せないアンと、パニの目を手で覆いつつ困惑するフォルテ、そして惚れ惚れとした視線を王女へ送るメティアが居た。

「あ、あの、あの……やっぱり自分の服装に……」

「ダ~メ! 思った通りお似合いじゃん。アンに見とれるレインが目に浮かぶねー!」

 見とれるどころか視線を逸らされるのではあるまいか?

 メティアでさえも相当な露出度と思われたが、アンの着衣はそれを上回っていた。

 加えて彼女のスタイルの良さが、色気を十二分に誇張させている。

「フランベルジェの女性が、このような格好をしていたとは記憶にないのだけど……?」

「そうぉ? あの国は常夏(とこなつ)みたいな気候だからね。薄着でいなかったら熱中症で死んじまうよ?」

 数回父王に連れられて外遊した記憶があるが、春に当たるこの季節にこれほどの装いが必要であっただろうか?

 夏には痛いほどの熱射に襲われる国とはいえ、それならむしろ肌を守るような長衣であるべきだ。

 アンは余りの気恥ずかしさに、ベッドから思わずシーツを手繰(たぐ)り寄せた。

「あ~もうっダメだったら! こんなに白くてスベスベな肌、見せなかったらもったいないって!!」

「も、もったいない……?」

「フォルテさん、お願い! ボクも見たいー!!」

「幾ら十三歳と言えど、姫さまのこのようなあられもないお姿、殿方にはお見せ出来ません!」

「あられもないだって~~~プププ!」


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