◇水嶺のフィラメント◇

[7]散らばる砂

「……それからレインはあたいを、風の民が暮らす「山」へ連れていってくれてね。今の首長(リーダー)と対面して、あたいは風の「旅」側に迎えられたんだ」

「え?」

 メティアの続きにアンは疑問を呈した。

 レインは「山」の所在をどうやって知り得たというのだろう?

「ああ……詳しくは知らないが、レインはリーダーと懇意みたいだね。ただあたいも「山」のことについては一切他言するなと固く言われてるから、これ以上は話せないけど」

「そう……」

 何かが引っ掛かっていた。

 元々レインは以前から外交に力を入れていたが、首長とすら付き合いのある風の民について、今まで一度も口に出したことがないからだ。

「あたいも二十六を越えたら「山」の一員になれる! あの集落は穏やかでイイもんさ~アンもいつかレインと遊びに来たらいい」

「他言しないようにって口止めされているのに?」

「レインの口から聞けば行けるんじゃないか? あくまでも口外を禁止されてるのは風の民だからね」

 隠し通してきたのか、単に話すキッカケがなかったのか、これまで話題にもしなかったレインが、今後自分に打ち明ける機会はあるのか……分からないが、メティアが未来に暮らすであろう地と、パニの両親である首長夫妻には、いつかお目通し願いたいとアンも思った。


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