◇水嶺のフィラメント◇
[9]隠された道
アンとメティアが船上で大騒ぎしていた少し前──水車小屋にて置き手紙を見つけた兵士二人は、王女の足取りが掴めぬまま、ひとまず空き家に戻っていた。
「まさか姫さまが居なくなるだなんて……」
侍従二名・兵士五名、そしてパニとフォルテの計九名は、誰からともなく呟いたきり言葉を失ってしまう。
王女に約束させられた三十分後、パン屋の店主に案内された二人は、慌てて小屋内部を捜索した。
もちろん書き置きを見つけたのち、船がなくなっていることにも気付いて速攻川下の探索も行なったが、辺りは既に暗く、葦も高く伸びていて見通せなかったのだ。
そうでなくとも王宮は逆方向の川上に在る。二人は船で逃亡したと見せかけるため、舫を解いて船を放流しただけ、実際には陸路で王宮を目指したのかも知れない……そうとも考えてみたが、追いつくにはとうに時間が経ち過ぎていた。
「まさか姫さまが居なくなるだなんて……」
侍従二名・兵士五名、そしてパニとフォルテの計九名は、誰からともなく呟いたきり言葉を失ってしまう。
王女に約束させられた三十分後、パン屋の店主に案内された二人は、慌てて小屋内部を捜索した。
もちろん書き置きを見つけたのち、船がなくなっていることにも気付いて速攻川下の探索も行なったが、辺りは既に暗く、葦も高く伸びていて見通せなかったのだ。
そうでなくとも王宮は逆方向の川上に在る。二人は船で逃亡したと見せかけるため、舫を解いて船を放流しただけ、実際には陸路で王宮を目指したのかも知れない……そうとも考えてみたが、追いつくにはとうに時間が経ち過ぎていた。