君がくれた卒業式。
「律歌、今日顔色も悪いし熱もあるみたいだし、念の為病院へ行きましょう」

卒業まで残り1ヶ月を切った土曜日の朝、お母さんは私にそう言った。少し拒みつつも、渋々了承するとすぐに支度をして病院に連れて行かれた。

「では、レントゲン撮ってみましょう」

どこの病院に行ってもやられるような、聴診器や喉を診てもらうのをやってもらった後、先生にそう言われた。これ、ただの風邪じゃないの……?レントゲン……??

「ただの風邪じゃないんですか?先生。レントゲンって……」

私に付き添ってくれていたお母さんが心配そうに先生にそう聞いた。

「念の為、レントゲンを撮った方がいいと思います」

病院の先生特有の、低くて冷たい淡々とした口調でそう言われ、渋々レントゲンを撮った。

「これは間違いなく……癌です」

レントゲンを撮り終わったあと、先生に言われた言葉に私の心臓は跳ねた。え、え、私が、癌……?まだ18歳なのに?高校生なのに?もうすぐで、卒業式なのに……?

「そ、それほんとなんですか?何かの間違いじゃ……。この子が体調悪言って言い出したの今日が初めてで、昨日まで本当に何も無かったんです。癌って少しずつ段々……じゃないんですか?」

お母さんは、震える声でそう言った。

「律歌さん自身、本当に今日まで体調不良がなかったんですか?」

先生の言葉にまたも心臓がはねる。私……少し前から本当は……気づいてた……?

「……1ヶ月、くらい前から結構体調悪くて……でも、大きい病気だったら怖くて……ずっと秘密にしてました…… 」

申し訳なさで、声が小さくなる。お母さんは、その場で泣き崩れてしまった。

「まだ治療すれば治る段階なので、明日から2ヶ月ほど入院する事をお勧めします」

私と母に、またも淡々と告げられた言葉。2ヶ月……入院……。それじゃあ、卒業式は……?

「わかりました、お願いします」

そうすぐに返事をしたのは、お母さんだ。待って、待って、でもそしたら……。

「卒業式、は……?」

お母さんの方を向いて、泣きそうな顔でそう言った。卒業式、出れなくなるの……?

「ごめん、ごめんね律歌」

謝らないでよ、お母さん。悪いのは私。癌なんかになった私だよ……。お金も心配も沢山負担をかけてしまう。なのに、頭の中は友人や好きな人のことでいっぱいだった。卒業式にもきっと出られなくなって、友達にはもう会えないかもしれない。彼に、まだ告白出来ていないのに……。
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