【短編】赤い瞳に囚われて
 高く筋の通った鼻に、形のいい唇。
 顎のラインから耳の形まですべてが完璧と言っていいほどの美しさだ。

 そんな彼の膝の上に、わたしは座らされていた。


「お、美味しいです……」

 ちゃんと言葉を返しながらも、居心地の悪さは変わらない。

 こんな美しい人の膝の上に座るなんて、二人きりの時でも恥ずかしいのにみんなのいる前でなんて何度回数を重ねても慣れるとは思えなかった。


 はじめは「リヒト様のお膝の上に乗るなど!」と非難していた人もいたけれど、リヒトのひと睨みで黙ってしまった。

 それからはみんなからスルーされてしまうし、リヒトは当然のように膝に座らせるし……。


 せめて誰か突っ込んで!


 と毎回恥ずかしい思いをしている。

 せめてみんなの前では椅子に座らせてと頼んだのに。

「俺は常にお前に触れていたいんだが……夢莉は違うのか?」

 なんて悲しそうな目で言われて違うとも言えなかった。

 そのまま丸め込まれてこの状態。


 もう耐えるという以外に選択肢がない。

 だから頑張って耐えようとしているのに、リヒトは容赦してくれないんだ。


「今キスをしたら、お前の精気はイチゴの味がするのかな?」

「ふぇ!?」

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