『始まったふたり。』最後から、始まる。ー番外編ー

オレと歌笑は

今まで

何もなかったわけじゃなくて…



ちゃんと付き合う前に

キスもしたし

その前にカラダから始まった



高校3年の2学期くらいから卒業するまで

そーゆーことが何度かあった



先生が結婚して妊娠して

学校を去った後



オレを励ましてくれたのは

歌笑だった



先生の代わりに

昼休み毎日音楽室で

ピアノの伴奏の練習をしてた歌笑



歌笑が頑張ってるから

オレも頑張ろうって思えた



不安そうな後ろ姿

自信なさそうに聴こえてくる伴奏



走れなかった時のオレみたいで

歌笑を抱きしめた



歌笑も

オレを抱きしめ返してくれた



大会前

不安で先生を抱きしめたのに

先生は返してくれなかった



だからオレ

わざと2位になったりして

ホント子供ぽかったな



先生から見たら

結局子供だけどね



抱きしめ合えた歌笑とは

わかり合えた気がした



そんな歌笑を

オレは少しずつ好きになってた



部活も引退して

大学が決まった



歌笑と

もぉ励まし合うこともない



歌笑を抱きしめたくなった

どんな感情で?



たぶん

恋だった



ドキドキした



先生に抱いた気持ちと

同じヤツ



教室で目が合っても

歌笑はそらした



オレのこと

嫌いなのかな?



好きとか

付き合おうとか

伝えたら

迷惑かな?



音楽室にいたら

歌笑が来てくれる気がして

昼休みの音楽室に用もなくいた



そしたら

ホントに歌笑が来て



また抱き合った



浅倉のこと、好きだよ

オレと付き合ってほしい



喉まで出掛けた

その言葉を

オレは飲み込んだ



そーだ

今伝えても

遠距離になる



でも

抱き合ったオレ達は

離れられなくて



「杉山
離さないで…
離れないで…」



歌笑が深くオレを抱きしめた



オレももっと歌笑を

歌笑が欲しくなった



好きとか

そんなことを超えて



歌笑を求めていいなら…

歌笑が求めてくれるなら…



先生は

求めてもオレのものにならなかった



歌笑は…

浅倉は…



浅倉の制服の中に

ゆっくり手を入れた



柔らかい膨らみが

オレの手に馴染んで

熱くなった



浅倉はオレを受け入れた



浅倉が求めてくれるなら

オレは離れないよ



歌笑はどんな気持ちで

オレにカラダを許したのかわからないけど



してる時

歌笑はいつもオレの目を見てた



そんな歌笑がかわいくて

愛おしく思えた



いつの間にか

大好きだった先生より

歌笑を本気で好きになってた



地元の大学だったら

気持ち伝えたのに…



卒業までの関係なんだから

好きとかそんなのは

やっぱり邪魔な気がした



伝えていなくなるのは

なんかズルい気がした



そのまま

オレと歌笑は

卒業式を迎えた



最後の日

オレの部屋でした時

歌笑にキスしたくなった



初めてのキス



好きだから…

好きだったから…

歌笑に気持ちを伝えてしまった



「好きだった」



過去形で言ったその言葉は

ホントはまだ続いてて



オレは歌笑と

したいだけじゃなくて

遊びだったわけじゃなくて

好きだった



大学で離れても

たぶん歌笑が好き



歌笑のことは

忘れられないと思う



歌笑は今日が最後にしたくないって言ったけど

オレのことを大キライ!って言った



ベッドの上で

明日も会わないか聞いてみたら

歌笑の返事はなかった



あー…終わった

あー…嫌われた

あー…伝えなきゃよかった



そう思ったけど

遅かった



もぉ歌笑に会えない

こんな関係で繋がってたいわけじゃないけど

きっとそれももぉ終わり



でも大キライ!は

予想外だった



歌笑とそんな関係になったこと

歌笑に気持ちを伝えてしまったこと

歌笑の気持ちを知ったこと

歌笑にもぉ会えないこと



後悔しかなかった



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