『始まったふたり。』最後から、始まる。ー番外編ー
「私、着替えるね」
アパートに着くなり
歌笑が言った
「着替えるの?
なんかもったいない気する
今日は寝るまでそれでいてよ」
「寝るまでか…
寝たら明日になっちゃうね
明日はもぉ帰らなきゃ…」
「なんだ
それで歌笑、なんか元気なかったの?」
「うん」
かわいいじゃん
オレもヤダよ
明日はもぉ歌笑が帰るなんて
「オレも夏休みに帰るし…
また毎日電話するし…」
「うん…
…
あとね
かわいい子がいっぱいいて
なんか不安になった」
「え?」
「杉山、目移りしないかな…って
…
カフェも
大学の友達と行くのかな?って
…
観覧車も私いなくても
杉山はいつでも行ってもいいよ
…
こっちに来てオシャレな美容院いって
杉山どんどんカッコよくなって…
…
きっとこれからいろんな出会いがあって…」
歌笑
なんでそんなこと
言うの?
「歌笑…
いろんな人と出会うかもしれないけど
オレは歌笑がいいから…
…
オレの都合で
こっちの大学来てるから
何も言えないけど…
…
特別なのも
大切なのも
歌笑だから…
…
それだけは
向こうにいても
こっちにいても
変わらないから…」
「うん…とりあえず、着替えるね」
「歌笑、オレの話、聞いてた?」
「うん、でも似合わないもん
今日も私と一緒に歩きたくなかったでしょ」
「は?何言ってんの?」
「だってラーメン屋さんでも
私のこと隠したじゃん」
「隠した?
あ、アレは…」
歌笑をみんなに見せたくなかった
小さすぎて言いにくい
「ごめんね…
もっと杉山に好きになってもらえるように
かわいくなるね」
もぉ、かわいいし
もぉ、とっくに好きだわ
「じゃー、言うけど
アレは…
ラーメン屋で歌笑の隣に誰か座ったら
ヤダったし…
なんか、みんな歌笑のこと見てたから…」
「恥ずかしかった?」
「恥ずかしいとかそーゆーんじゃなくて…
見せたくなかった
…
歌笑がかわいいから
みんな見てたんだろ
…
こんなこと言ったら
歌笑に嫌われるかな…って…
…
ごめん、オレ
歌笑のこと、好きすぎて…」
あー…
ダサすぎ
オレ
「そんなこと言うけど
杉山は…
ずっと一緒にいたのに…
昨日もその前も一緒に寝たのに…」
歌笑が言葉を溜めた
「なに?
言いたいことあったら、言ってよ
オレも言ったし…」
「…しないの?
私と、したいと思わないでしょ
…
もぉ、私に触りたいと思わないでしょ
…
久しぶりに杉山に会って
私だけ気持ちたかぶっちゃって
キスしたい…とか言って
私、バカみたい
杉山、無理にしてくれた?
…
私の他にそーゆー人いるのかな…とか…
…
あんなにいっぱい人がいたら
別に私じゃなくても…とか…」
歌笑
そんなこと思ってたの?
歌笑を
思いっきり抱きしめた
「しても、いいの?
したいよ、歌笑と…
…
触れたいよ、歌笑に…
キスもしたいよ
…
ずっと我慢してた
それ目当てとかじゃないけど
好きだから…したい
…
歌笑しかいないから…
他にいるわけないじゃん
…
歌笑しか、好きじゃないよ」
歌笑の肩が
震えてた
ずっと我慢させてたの
オレじゃん
「歌笑、ごめん…
…
まぁ、オレも不安だから、わかる
歌笑がどんどんかわいくなって
地元で男できて
でもこっちに来たのオレだし
オレには文句言う資格ないけど
…
これからお互いいろんな人と出会って
いろいろあるかもしれない
…
でもオレ
たぶん歌笑のことは
ずっと忘れないと思う
…
初めてキスしたの、歌笑だし…
もちろん初めてしたのも歌笑だし…
こんなに好きになったのも歌笑だけだし…
…
付き合ってすぐ遠距離になったけど
離れてるぶん
会いたくて仕方なくて
会った時、もっと好きになってた
…
たぶん、我慢て必要なんだ
…
あのさ…
まだキスのタイミングもよくわかんないし
でもしたくないわけじゃなくて
…
恥ずかしいけど
いつもしたいって思ってる
…
笑った歌笑見ても
今みたいにちょっと言い合いになっても
…
どんな歌笑見ても
好きだな…って
抱きしめたくなる
…
近くにいる時ぐらい
ずっとくっついてたい
…
あー…恥ずい…
…
でも
これがオレの気持ち」
歌笑の震えが落ち着いて
オレの身体に歌笑が馴染んだ
歌笑の髪を撫でた
「こーされるの、好きなの?」
「うん…好き…」
「それも
オレだけがいいな…
…
この耳の後ろのホクロとか
オレしか知らなきゃいいな…」
ーーー
歌笑の耳元にそっとキスした
「ウソ…そんなところにホクロある?」
うつむいてた歌笑が
顔を上げた
「歌笑も知らなかった?」
「うん…」
「オレ、付き合う前から知ってたよ
…
オレしか知らない歌笑を
これからもっと知りたい」
誰にも知られたくないし
誰にも教えたくない
ーーー
キスした時
はにかむ歌笑も
「杉山…好き…」
オレに甘える
かわいい声も
「オレも好き…
…
たから…
歌笑…
…
したい…」
「うん…」
ーーーーー
ーーー
ーーー
歌笑に触れた指先が熱くなる
ーーー
ーーーーー
「ん…」
「歌笑、痛い?」
「んーん…」
「気持ちいい?」
「ん…恥ずかしい…」
「歌笑…もっと教えて…」
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歌笑が少しずつ
高揚していく感じが
オレは好きで
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歌笑が熱くなるほど
歌笑が紅くなるほど
余裕なくなる
「ん…颯…好き…」
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「今度来た時
観覧車でキスしようね」
「うん…」
「好きだからね…歌笑…」
「うん…」
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ーーー
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「服、歌笑に似合っててかわいいけど
脱がしてもいい?」
「ん…ダメ…」
「フ…イジワル…」
襟元から見える鎖骨も
華奢な肩も
スカートから出る細い脚も
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全部
興奮する
誰でもいいわけじゃなくて
歌笑だから
歌笑が
いい
「もっとキスして…颯…」
「うん…」
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「歌笑、キス好きなの?」
「うん…
優しくて、好きだよ
颯のキス…」
ーーー
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タイミングとか
まだよくわかんないけど
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言いたいこと言ったら
なんか上手くいくんじゃないかな
「歌笑が好き」
「颯が好き」
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