ブラウンシュガー
cafe.ICHI
一、仔犬くん
「いらっしゃいませ~。お席ご自由にどうぞ。」
店内を見渡すと、私のお気に入りの場所は空いていた。
「あそこ、いいですか」
「どうぞ。お水、お持ちしますね。」
手慣れた感じの女性スタッフが、明るく返してくれた。
私が、よく来るこのカフェは、ウォールナッツ色のテーブルや椅子に、アンティークなライトやオーナメントで店内が装飾されている。奥の厨房から時々きこえてくる鼻唄や、しょーもない親父ギャグが、店の雰囲気とギャップがあって、そこも密かにお気に入り。
「ご注文お決まりですか?」
フッと、声の方をみると、昨日、お会計に出てきた男の子だった。
「あ…えっと…」
「いつもので、いいですか?お砂糖もいりますよね。あとは…チョコブラウニーとニューヨークチーズケーキ、テイクアウトされますか?」
彼は、めちゃくちゃ笑顔で、ブンブン尻尾をふってる仔犬みたいだった。
「え?でも、今日、金曜じゃないですけど…」
「そうなんですよ!でも、なんでか、マスターが曜日間違えて作っちゃったらしくて!どうですか?」
「え、…あ、じゃぁ…」
「ありがとうございます。では、ご用意しますね」
尻尾をブンブン振ったまま、仔犬くんは中へ消えていった。
ニ、水曜と金曜
間もなくして、次に来たのは、さっきの女性の方だった。「お待たせしました。ごゆっくり、どうぞ。」
「あ、あの…」
「どうかされましたか?」
「あ、いえ、あの…さっき、若い男性のスタッフの方、いつも飲んでるものとか、知ってて…」
「そうでしたか…すみません。(もぅ、アイツはっ💢)」
彼女は小さく彼をなじった。
「なんで知ってるんですかね…実は昨日も…」
なんで、そんなこと聞くんだろう…
自分でもよく分からないけど、勝手に口が動く…
「…」
女性は黙ったまま、じっと、私を覗き込んできた。
「あ、すみません。私、余計なこと…」
「あの!失礼ですけど、あなた、K国大?」
女性は、目をキラキラさせて、聞いてきた。
「え、そうです…けど…」
「毎週、水曜と金曜に、うちの店、来て下さってました?」
「えぇ??」
女性がニッコリ笑って言った。
「たぶん…あなた、アイツの一目惚れ、なんじゃないですかね!」
えぇ???ちょっと待って!
「ごゆっくり~」
彼女は口に人差し指をあて、まるで内緒!とでも言うように行ってしまった。
えぇー?!何それ…
私は、さっき、瑛大に別れを告げてきて、感傷に浸ってたんだよ。大好きな彼氏に裏切られ、泣いた3年間を振り返ってたのに…
たしかに、私は、このカフェを、水曜は瑛大との待ち合わせに、金曜は家庭教師のバイトに行くまでの時間潰しに使っていた。瑛大が亡くなった後も、水曜は、電車に乗る前に寄っていた。
「ずっと、私のこと、知ってたってこと…?」
ずっと見られてたのかと思うと、嫌な気分だった。
瑛大のことは、今日で終わりにしたんだし…ここも、やめようかな…
私は、なかば強引な注文で運ばれてきた紅茶を、砂糖をいれずに飲んでみた。
「いらっしゃいませ~。お席ご自由にどうぞ。」
店内を見渡すと、私のお気に入りの場所は空いていた。
「あそこ、いいですか」
「どうぞ。お水、お持ちしますね。」
手慣れた感じの女性スタッフが、明るく返してくれた。
私が、よく来るこのカフェは、ウォールナッツ色のテーブルや椅子に、アンティークなライトやオーナメントで店内が装飾されている。奥の厨房から時々きこえてくる鼻唄や、しょーもない親父ギャグが、店の雰囲気とギャップがあって、そこも密かにお気に入り。
「ご注文お決まりですか?」
フッと、声の方をみると、昨日、お会計に出てきた男の子だった。
「あ…えっと…」
「いつもので、いいですか?お砂糖もいりますよね。あとは…チョコブラウニーとニューヨークチーズケーキ、テイクアウトされますか?」
彼は、めちゃくちゃ笑顔で、ブンブン尻尾をふってる仔犬みたいだった。
「え?でも、今日、金曜じゃないですけど…」
「そうなんですよ!でも、なんでか、マスターが曜日間違えて作っちゃったらしくて!どうですか?」
「え、…あ、じゃぁ…」
「ありがとうございます。では、ご用意しますね」
尻尾をブンブン振ったまま、仔犬くんは中へ消えていった。
ニ、水曜と金曜
間もなくして、次に来たのは、さっきの女性の方だった。「お待たせしました。ごゆっくり、どうぞ。」
「あ、あの…」
「どうかされましたか?」
「あ、いえ、あの…さっき、若い男性のスタッフの方、いつも飲んでるものとか、知ってて…」
「そうでしたか…すみません。(もぅ、アイツはっ💢)」
彼女は小さく彼をなじった。
「なんで知ってるんですかね…実は昨日も…」
なんで、そんなこと聞くんだろう…
自分でもよく分からないけど、勝手に口が動く…
「…」
女性は黙ったまま、じっと、私を覗き込んできた。
「あ、すみません。私、余計なこと…」
「あの!失礼ですけど、あなた、K国大?」
女性は、目をキラキラさせて、聞いてきた。
「え、そうです…けど…」
「毎週、水曜と金曜に、うちの店、来て下さってました?」
「えぇ??」
女性がニッコリ笑って言った。
「たぶん…あなた、アイツの一目惚れ、なんじゃないですかね!」
えぇ???ちょっと待って!
「ごゆっくり~」
彼女は口に人差し指をあて、まるで内緒!とでも言うように行ってしまった。
えぇー?!何それ…
私は、さっき、瑛大に別れを告げてきて、感傷に浸ってたんだよ。大好きな彼氏に裏切られ、泣いた3年間を振り返ってたのに…
たしかに、私は、このカフェを、水曜は瑛大との待ち合わせに、金曜は家庭教師のバイトに行くまでの時間潰しに使っていた。瑛大が亡くなった後も、水曜は、電車に乗る前に寄っていた。
「ずっと、私のこと、知ってたってこと…?」
ずっと見られてたのかと思うと、嫌な気分だった。
瑛大のことは、今日で終わりにしたんだし…ここも、やめようかな…
私は、なかば強引な注文で運ばれてきた紅茶を、砂糖をいれずに飲んでみた。