クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
あっという間に日が暮れてきた。
私たちは軽くジャブを打つつもりで彼に家まで送ってもらった。 
彼と付き合っていると印象付けるために……。
計算ずくで悲しくなるが今のはなみずき製菓を救うためだと思えば笑うことができた。

「大丈夫。悪いようにはしないから。ちゃんと美波のことは解放してあげるから」

彼は震える私の手を握ると耳元で囁いてきた。
言われたこととは裏腹に彼の声に胸が高鳴った。

待ち伏せしていたとはいえないが偶然を装い父と挨拶を済ませた。これで私が修吾さんと付き合っていることをアピールできただろう。家に入っても修吾さんのことは何も言われないが、こんなハイスペックな彼と急に結婚すると信じてもらえるよう足がかりができたかなと思う。

部屋に戻るとわざわざうちに来てもらったことへの感謝を伝えるためメッセージを送るとすぐに既読が付き、よかったと一言だけ返信がきた。
相変わらず仕事のような淡白なメッセージのやり取りでちょっとだけ笑ってしまった。さっきあれほど結婚に対して色々相談してきたのに、と。
きっと私に対しては仕事の延長として付き合うつもりなんだなと再確認した。
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