クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
休みのたびに私は出かけることになった。

修吾さんは土日より平日の方が休みやすいらしく私に合わせてくれる。
丸一日の時もあれば半日の時もあるがなるべく合わせようと努力しているのを感じる。

「今日はキッチンのものを揃えるんだったな」

「はい。驚いたことに電子レンジもないですし買いたいです」

「すまない。本当に寝るだけなんだ。ハウスキーパーがたまに掃除に入っていたくらいで」

「あ、掃除機はありますか?」

「ないな」

私は苦笑いを浮かべると修吾さんも同じような顔で私と笑い合った。
何度か顔を合わせていくたびに彼とこうして笑い合えるくらいになった。
どこか仕事の延長線上という雰囲気はあるがそれでもだいぶリラックスして話ができるようになり、こんな感じなら結婚してもなんとかなるかもと思い始めていた。

「さ、必要なものはどんどん決めてくれ。俺には必要なものもわからない」

その言葉通り、知っていたら本来買い揃えているだろう。
よく独り暮らしができていたものだと思う。ガスや電気もあのコンシェルジュ付きマンションに住んでいるから開栓作業などなく済んだのだろう。普通のマンションならこの人暮らせてないかもな、と思うと吹き出してしまった。

「美波、楽しそうだな。俺のこと笑ったんだろう」

「いえ。でもお金がたくさんかかってしまいますが大丈夫ですか? すみません。私が住むばかりに色々用意しなければならなくて。私も折半しますのであとで払いますね」

「何言ってるんだ。本来なら揃っていて当たり前の家に来るんだから俺が揃える。気にしなくていい。昔からいうだろう、身ひとつで来てくださいってさ」

「うーん、私たちではそれは成り立たないですよ。恋愛だと情熱的にそうなるでしょうけど」

「そうか。ま、気にしないでどんどん買ってくれ」

私は電子レンジ、炊飯器、トースター、ケトル、掃除機を買い、ホームセンターで洗剤やフライパンなどの調理器具を一通り揃えた。お気に入りの雑貨屋さんでお皿やカップ、カトラリーを買うとさすがに修吾さんの車はもうパンパンになった。
マンションへ戻るとコンシェルジュが荷台を持って来てくれる運び込むのを手伝ってくれるが、それでも2往復になった。

「ありがとう。これから彼女と住むからよろしく頼むよ」

「かしこまりました。よろしくお願い致します」

とても物腰柔らかな男性で、頭を下げるとすっと戻っていった。

荷物を片付けらとあっという間に夕方になり、彼と食事に行きそのまま送ってもらった。
またお父さんと会えたら、と思ったがそう上手くはいかなかった。
再来週は彼の両親への挨拶だ。
その前にうちに挨拶に来たいと修吾さんと話している。早めに言わなければと思うがなかなか言い出しにくい。
新居の準備も進み、約束していた6月に入ってしまう。この分なら半ばには入籍と引っ越しができるかな、とさっき相談した。
周りは着実に固まりつつある。
私は意を決して父に話すことを決めた。
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