クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
彼は予定通り13時に老舗和菓子屋の袋を手に持ち、我が家へと入ってきた。
「本日はお時間をいただきありがとうございます」
彼はそう言うと名刺と菓子折りを差し出してきた。
「多岐川修吾と申します。美波さんとの結婚のお許しをいただきたく参りました」
彼は座布団から下り、きちんと父に頭を下げてくれた。
父はなかなか何も言ってくれない。
私も彼の隣で頭を下げるがまだ何も言ってくれず私たちは頭を下げたまま。
「ま、ま、まあ、頭を上げてくれ」
やっとそんな声が聞こえてきてふたりで頭を上げると父の目はうるんで真っ赤になっていた。
その顔を見て私は一気に涙が出てきてしまった。
「み、美波はしっかり者だがそれが故に頑張りすぎてしまうところがあるんです。だから強いと思われがちだが実は気持ちの優しい子なんです。守ってやってくれますか?」
父は声を震わせながら修吾さんに話しかける。修吾さんは父の顔を見つめながら大きく頷くと、
「はい。必ず大切に美波さんのことをお守りします。大切にします」
と言ってくれた。
私は父の言葉に胸を打たれ、さらに修吾さんの言葉に本心なのではないかと錯覚させられ涙が止まらなくなってしまった。
隣で聞いていた母もその様子に涙ぐんでいる。
「まさかこんなに早くお嫁出すなんてね」
父も頷いていた。
「今いただいたお菓子を開けさせていただきましょうね」
母は涙を拭くと立ち上がり、紙袋を持つとキッチンへ向かっていった。
私も手伝おうと後を追う。
「美波、誠実そうな彼ね。落ち着いているし、いい人に巡り会えたのね」
「うん」
私と母でお茶の準備をすると父と修吾さんはポツポツと会話をしているようだった。
私たちが戻るとふたりともホッとした表情を浮かべていた。
「そういえば多岐川さんのお名刺を拝見したわ。副社長ってもしかして副社長?」
母が意味のわからない質問をしているがそれに対して彼は誠実に答えていた。
「はい。メリディアン系列の本社で副社長をしております。父が社長、弟が戦略室で修行しています」
「まあ、そんな方がうちの娘でいいの?」
今さら名刺を確認し驚いた様子だったがそれを聞いても動じることなく、「美波さんがいいんです」と言い切ってくれた。
「私は仕事柄多忙でして、出来れば早く美波さんと一緒に暮らせればと思っておりますがいかがでしょうか。せめて入籍だけでもさせていただきたいと思っております」
彼の肩書を聞いて納得をしたのか父は頷くと私を見て、「美波がそれでいいなら、彼を支えてあげなさい」と許してくれた。
徐々に彼と家族との距離は縮まり、ようやく会話がスムーズに進むようになった。
彼は趣味である釣りの話をすると父は話に乗り出し、昔はよく行っていたと言い出した。すると今度一緒に行きましょう、と父を誘ってくれるからの姿にホッとした気持ちになった。
政略結婚の話をしないで欲しいとお願いはしていたが、そんなそぶりも見せず私の家族に良くしてくれる姿を見て感謝しかない。
夕飯時になりお酒が入るとさらに意気投合したのか、彼が合わせてくれているのか話が盛り上がる。
由梨子も仕事を終え、帰宅すると彼の顔を見て驚いていた。
「あ、あの時のお客さまじゃない!」
「あ、うん。多岐川修吾さんっていうの」
「多岐川です。よろしくお願いします」
彼は由梨子に頭を下げると、慌てて由梨子も挨拶をしてくれた。
「妹の由梨子です。よろしくお願いします」
そのままみんなでお寿司を囲みながら、思っていた以上に和やかな時間を過ごすことができた。
「本日はお時間をいただきありがとうございます」
彼はそう言うと名刺と菓子折りを差し出してきた。
「多岐川修吾と申します。美波さんとの結婚のお許しをいただきたく参りました」
彼は座布団から下り、きちんと父に頭を下げてくれた。
父はなかなか何も言ってくれない。
私も彼の隣で頭を下げるがまだ何も言ってくれず私たちは頭を下げたまま。
「ま、ま、まあ、頭を上げてくれ」
やっとそんな声が聞こえてきてふたりで頭を上げると父の目はうるんで真っ赤になっていた。
その顔を見て私は一気に涙が出てきてしまった。
「み、美波はしっかり者だがそれが故に頑張りすぎてしまうところがあるんです。だから強いと思われがちだが実は気持ちの優しい子なんです。守ってやってくれますか?」
父は声を震わせながら修吾さんに話しかける。修吾さんは父の顔を見つめながら大きく頷くと、
「はい。必ず大切に美波さんのことをお守りします。大切にします」
と言ってくれた。
私は父の言葉に胸を打たれ、さらに修吾さんの言葉に本心なのではないかと錯覚させられ涙が止まらなくなってしまった。
隣で聞いていた母もその様子に涙ぐんでいる。
「まさかこんなに早くお嫁出すなんてね」
父も頷いていた。
「今いただいたお菓子を開けさせていただきましょうね」
母は涙を拭くと立ち上がり、紙袋を持つとキッチンへ向かっていった。
私も手伝おうと後を追う。
「美波、誠実そうな彼ね。落ち着いているし、いい人に巡り会えたのね」
「うん」
私と母でお茶の準備をすると父と修吾さんはポツポツと会話をしているようだった。
私たちが戻るとふたりともホッとした表情を浮かべていた。
「そういえば多岐川さんのお名刺を拝見したわ。副社長ってもしかして副社長?」
母が意味のわからない質問をしているがそれに対して彼は誠実に答えていた。
「はい。メリディアン系列の本社で副社長をしております。父が社長、弟が戦略室で修行しています」
「まあ、そんな方がうちの娘でいいの?」
今さら名刺を確認し驚いた様子だったがそれを聞いても動じることなく、「美波さんがいいんです」と言い切ってくれた。
「私は仕事柄多忙でして、出来れば早く美波さんと一緒に暮らせればと思っておりますがいかがでしょうか。せめて入籍だけでもさせていただきたいと思っております」
彼の肩書を聞いて納得をしたのか父は頷くと私を見て、「美波がそれでいいなら、彼を支えてあげなさい」と許してくれた。
徐々に彼と家族との距離は縮まり、ようやく会話がスムーズに進むようになった。
彼は趣味である釣りの話をすると父は話に乗り出し、昔はよく行っていたと言い出した。すると今度一緒に行きましょう、と父を誘ってくれるからの姿にホッとした気持ちになった。
政略結婚の話をしないで欲しいとお願いはしていたが、そんなそぶりも見せず私の家族に良くしてくれる姿を見て感謝しかない。
夕飯時になりお酒が入るとさらに意気投合したのか、彼が合わせてくれているのか話が盛り上がる。
由梨子も仕事を終え、帰宅すると彼の顔を見て驚いていた。
「あ、あの時のお客さまじゃない!」
「あ、うん。多岐川修吾さんっていうの」
「多岐川です。よろしくお願いします」
彼は由梨子に頭を下げると、慌てて由梨子も挨拶をしてくれた。
「妹の由梨子です。よろしくお願いします」
そのままみんなでお寿司を囲みながら、思っていた以上に和やかな時間を過ごすことができた。