クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
結局父に引き留められ、帰るのが遅くなってしまったが彼はお酒に強いのか足取り確かに帰っていった。

私は心配で駅まで送ると言ったが、ひとりでまた駅から帰すのが心配だから、と見送りを断った。
そんな姿を見て母も妹もメロメロだ。

「本当にいい人だね。羨ましい。駅からひとりで帰すのが心配、だなんて言われてみたい〜」

私は由梨子に言われると顔が熱くなった。
逃げるように自室へ戻った。
しばらくしてから修吾さんにメッセージを送ると無事に着いたと返信が来た。
今日のお礼を言うと珍しく彼から自分も楽しかった、返信が来た。

今日大きな前進があったことは間違いない。
次は私が多岐川家にご挨拶に行く番だ。
緊張するが彼がしてくれたように私も彼の両親と仲良くできたら、と思う一方で嘘をついている罪悪感がのしかかってくる。

こんなことしてよかったのかな。

彼と私にはメリットがあるけれど家族には嘘をつき続けなければならない。
周囲を巻き込む嘘をつくことに胸が苦しくなってしまった。

家族のために、家族に嘘をつき、傷つけるなんて本末転倒。
でも何年かしたらこの決断をしてよかったと思う日が来ると信じて前に進むしかない。
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