クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
ホテルのフロントに着くと男性に声をかける。
「すみません。はなみずき製菓と申しますが結婚式の担当の方とお話しできませんでしょうか?」
「アポイントはございますか?」
「いえ、ありません」
「こちらはホテルで、営業を始めとして全ての業務は本社が行なっておりますのでそちらにお問合せください」
そう言うとフロント係の男性は私のそばを離れていった。
そんなことも知らなかったのかと自分を恥ずかしく思い頭を下げるとすぐにこの場から逃げ出した。
まずホテルの本社とはどこにあるのかさえわからない。それにアポイントを取らなければならないこともわかった。
他のホテルではこんな説明さえもしてくれず、不在ですとしか教えてもらえなかった。
確かに、今どき突撃して営業をかけるなんて聞いたことない。それにここはホテルだから言われてみれば話のできる人がいるはずがない。我ながら考えが及ばす、浅はかな行動だったと情けなくなり、失笑してしまった。
出直そうとエントランスを抜け、ホテルのゲートを出たところで履きならないヒールがマンホールに引っかかり転んでしまった。
バッグの中身も周囲にぶちまけてしまった。
私は恥ずかくて起き上がろうとするが膝を擦りむき出血してきた。
ああ、ついてない。
ますます情けなくなり涙が浮かんできた。
手近にあったハンカチで膝を押さえ、私は立ち上がり散らばった荷物を集め始めた。
すると目の前に黒い影が現れた。
ふと視線を上げると目の前にスーツを着た男性が私の金平糖をかき集めてくれたのかいくつも手にしていた。
「ありがとうございます」
「大丈夫ですか?」
「は、はい。すみませんでした」
私は彼の手から金平糖を受け取りバッグにしまった。けれどこんなにたくさんの金平糖を持ち帰るのも意気込んで出てきた手前、持ち帰りにくい。
「もしよろしければもらってください。営業に来たんですけどアポイントも取らずに来てしまって失敗したんです。なので良かったら食べてください。イチオシのみかん味とコーヒー味です」
「え? ああ、いただいていいのかな?」
「持ち帰るのも恥ずかしいのでよろしければもらってください」
私の言葉で察してくれた彼は手を出すと私が差し出す金平糖を受け取ってくれた。
「では」
そう言うと私は駅に向かって歩き出した。
足は痛いし、ストッキングも電線してしまっている。
情けなさに拍車がかかり歯を食いしばるが歩きながら涙がこぼれ落ちてきてしまった。
家に帰るとすぐにシャワーを浴び、出てきたところでやっと母に声をかけることができた。
「お母さん、今日は難しかったからまた行ってみるね。疲れたからもう寝るね」
それだけ言うと部屋へ戻った。
無知な自分が情けなくて、ベッドの中でまた涙がこぼれてしまった。
「すみません。はなみずき製菓と申しますが結婚式の担当の方とお話しできませんでしょうか?」
「アポイントはございますか?」
「いえ、ありません」
「こちらはホテルで、営業を始めとして全ての業務は本社が行なっておりますのでそちらにお問合せください」
そう言うとフロント係の男性は私のそばを離れていった。
そんなことも知らなかったのかと自分を恥ずかしく思い頭を下げるとすぐにこの場から逃げ出した。
まずホテルの本社とはどこにあるのかさえわからない。それにアポイントを取らなければならないこともわかった。
他のホテルではこんな説明さえもしてくれず、不在ですとしか教えてもらえなかった。
確かに、今どき突撃して営業をかけるなんて聞いたことない。それにここはホテルだから言われてみれば話のできる人がいるはずがない。我ながら考えが及ばす、浅はかな行動だったと情けなくなり、失笑してしまった。
出直そうとエントランスを抜け、ホテルのゲートを出たところで履きならないヒールがマンホールに引っかかり転んでしまった。
バッグの中身も周囲にぶちまけてしまった。
私は恥ずかくて起き上がろうとするが膝を擦りむき出血してきた。
ああ、ついてない。
ますます情けなくなり涙が浮かんできた。
手近にあったハンカチで膝を押さえ、私は立ち上がり散らばった荷物を集め始めた。
すると目の前に黒い影が現れた。
ふと視線を上げると目の前にスーツを着た男性が私の金平糖をかき集めてくれたのかいくつも手にしていた。
「ありがとうございます」
「大丈夫ですか?」
「は、はい。すみませんでした」
私は彼の手から金平糖を受け取りバッグにしまった。けれどこんなにたくさんの金平糖を持ち帰るのも意気込んで出てきた手前、持ち帰りにくい。
「もしよろしければもらってください。営業に来たんですけどアポイントも取らずに来てしまって失敗したんです。なので良かったら食べてください。イチオシのみかん味とコーヒー味です」
「え? ああ、いただいていいのかな?」
「持ち帰るのも恥ずかしいのでよろしければもらってください」
私の言葉で察してくれた彼は手を出すと私が差し出す金平糖を受け取ってくれた。
「では」
そう言うと私は駅に向かって歩き出した。
足は痛いし、ストッキングも電線してしまっている。
情けなさに拍車がかかり歯を食いしばるが歩きながら涙がこぼれ落ちてきてしまった。
家に帰るとすぐにシャワーを浴び、出てきたところでやっと母に声をかけることができた。
「お母さん、今日は難しかったからまた行ってみるね。疲れたからもう寝るね」
それだけ言うと部屋へ戻った。
無知な自分が情けなくて、ベッドの中でまた涙がこぼれてしまった。