クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
エレベーターで3階のバンケットへ入ると私たちに視線が注がれた。
彼に腰を抱かれ、密着するように中に入るがずっと視線を感じている。
修吾さんは特に感じないのか、気にしている素振りはない。
ウェイターから飲み物を受け取ると会場の真ん中へと進んでいった。
程なくして主催者からの挨拶があり、乾杯の音頭がとられた。
「乾杯」
すると修吾さんは私のグラスと重ねると中に入っていたシャンパンを口にした。
私も口に運ぶとフルーティーな香りが鼻から抜けていく。
「美味しい」
小さな声が漏れ出ると彼は微笑みながら頷く。
「これ、わざわざ今日のために取り寄せたんだ。とても珍しくて乾杯の一杯に是非使いたかったんだ。値も張るが、それだけの価値がある。勝者の飲み物と言われ、お祝いの席にはもってこいだと思わないか?」
私は頷く。今まで飲んだことのない味がした。最初はフレッシュなフルーツの香りが鼻から抜けた気がしたが飲み終わりにはスパイスのようなパンチが残る。
「俺は今日これを飲むために来たと言ってもいいくらい」
こんなに機嫌のいい修吾さんを初めて見た。
よほどこのシャンパンが飲みたかったのだろう。
彼はシャンパンの説明をしてくれるが私にはよくわからない。けれどこのシャンパンがどれだけ特別なものかはわかった。
「こんばんは」
私たちの背後から声がかかった。
振り返ると真っ赤なドレスを着た女性が立っていた。黒いピンヒールが大人だと感じさせる。胸元がかなり開いており豊満な胸が強調されていて、女性の私でも目のやり場に困る。
「田丸様、ご無沙汰しております」
彼はきちんと向き直ると丁寧に挨拶をした。その姿を見て私も後ろで頭を下げた。
「修吾さん、結婚されたって本当だったんですか?」
「はい。先日入籍を済ませました。妻の美波です」
彼は私を引き寄せると紹介してくれたが彼女の目は笑っておらず嫌悪の眼差しだった。
私は思わず一歩下がってしまうが腰には彼の手が添えられたまま。
「残念です。まさか修吾さんが結婚されるなんて。どちらの方なのでしょう?」
「妻はこの業界の人ではないんですよ。普通の会社勤めです」
上から下まで値踏みするように見られて居心地の悪さを感じる。
彼女は修吾さんのことが好きなのかもしれないと直感で思った。
「普通の方を選ぶなんて思いもしなかったわ。意外ですし、残念です」
私のことを残念と評していたはずなのに、いつのまにか彼の株も下がってしまった言い方をされ、どうしたらいいのか分からず手に持ったバッグに力がはいる。
「私は今すごく幸せなので大丈夫です。失礼します」
そう言うと私を連れ、彼女の前から移動した。
「チッ。いちいちうるさいな。ああいうのが1番嫌いなんだよ。他の女を値踏みして、誰を連れていても面白くないんだ。でも、嫌な思いさせて悪かったな」
彼は小声で悪態をつきながら私に謝ってくれる。
今までもこういうことがたくさんあったのだろう。だからこその彼にとっての政略結婚が必要だったのだと分かった。
繋がりのない一般人との結婚こそが彼にとっての最大のメリットなんだわ。
彼といると色々な人が話しかけてくるが女性からは上から下まで値踏みされ、居心地の悪さが否めない。
美容室でヘアメイクをしてもらい、ドレスを着ていなかったことを考えると恐ろしい。
彼は微笑みながら私の顔を見つめてくるため本当の夫婦になったのでは、と勘違いしそうになる。そのくらい彼は演技派だった。
『美波』と甘い声で呼ばれるだけで胸が高鳴る。
どれだけの人に挨拶をしたのだろう。
会う人会う人みんなに修吾さんは声をかけられる。
その度に私の腰を引き寄せ、妻だと紹介する。
私はどう振る舞うのが正解か分からず、ひたすら笑顔を貼り付け話を聞いていることしかできなかった。
挨拶がようやく落ち着いてきたように思えた頃、久しぶりに履くヒールで足が痛くなってきたが言い出すことが出来ずにいた。
しかしとうとう靴ずれがひどくなり皮がむけてしまったようだ。
一歩歩くたびに痛みが走る。
それでも私は笑って修吾さんの隣に立っていると後ろから声がかかった。
「こちらで話しませんか?」
彫りの深い背の高い男性でブルーグリーンの瞳が目をひいた。ハーフなのかもしれないこの男性は修吾さんの隣にいる私に直接声をかけた。
さっと修吾さんの手から私を連れ出すとフロアの隅へと案内された。
修吾さんは彼のその行動に驚いた表情を一瞬浮かべるが、話相手は会話をやめることなく話し続けており、私に声をかけることができなかった。視線は私のことを追いかけている気がするが私の手を引く彼は力強く戻ることができない。
彼に腰を抱かれ、密着するように中に入るがずっと視線を感じている。
修吾さんは特に感じないのか、気にしている素振りはない。
ウェイターから飲み物を受け取ると会場の真ん中へと進んでいった。
程なくして主催者からの挨拶があり、乾杯の音頭がとられた。
「乾杯」
すると修吾さんは私のグラスと重ねると中に入っていたシャンパンを口にした。
私も口に運ぶとフルーティーな香りが鼻から抜けていく。
「美味しい」
小さな声が漏れ出ると彼は微笑みながら頷く。
「これ、わざわざ今日のために取り寄せたんだ。とても珍しくて乾杯の一杯に是非使いたかったんだ。値も張るが、それだけの価値がある。勝者の飲み物と言われ、お祝いの席にはもってこいだと思わないか?」
私は頷く。今まで飲んだことのない味がした。最初はフレッシュなフルーツの香りが鼻から抜けた気がしたが飲み終わりにはスパイスのようなパンチが残る。
「俺は今日これを飲むために来たと言ってもいいくらい」
こんなに機嫌のいい修吾さんを初めて見た。
よほどこのシャンパンが飲みたかったのだろう。
彼はシャンパンの説明をしてくれるが私にはよくわからない。けれどこのシャンパンがどれだけ特別なものかはわかった。
「こんばんは」
私たちの背後から声がかかった。
振り返ると真っ赤なドレスを着た女性が立っていた。黒いピンヒールが大人だと感じさせる。胸元がかなり開いており豊満な胸が強調されていて、女性の私でも目のやり場に困る。
「田丸様、ご無沙汰しております」
彼はきちんと向き直ると丁寧に挨拶をした。その姿を見て私も後ろで頭を下げた。
「修吾さん、結婚されたって本当だったんですか?」
「はい。先日入籍を済ませました。妻の美波です」
彼は私を引き寄せると紹介してくれたが彼女の目は笑っておらず嫌悪の眼差しだった。
私は思わず一歩下がってしまうが腰には彼の手が添えられたまま。
「残念です。まさか修吾さんが結婚されるなんて。どちらの方なのでしょう?」
「妻はこの業界の人ではないんですよ。普通の会社勤めです」
上から下まで値踏みするように見られて居心地の悪さを感じる。
彼女は修吾さんのことが好きなのかもしれないと直感で思った。
「普通の方を選ぶなんて思いもしなかったわ。意外ですし、残念です」
私のことを残念と評していたはずなのに、いつのまにか彼の株も下がってしまった言い方をされ、どうしたらいいのか分からず手に持ったバッグに力がはいる。
「私は今すごく幸せなので大丈夫です。失礼します」
そう言うと私を連れ、彼女の前から移動した。
「チッ。いちいちうるさいな。ああいうのが1番嫌いなんだよ。他の女を値踏みして、誰を連れていても面白くないんだ。でも、嫌な思いさせて悪かったな」
彼は小声で悪態をつきながら私に謝ってくれる。
今までもこういうことがたくさんあったのだろう。だからこその彼にとっての政略結婚が必要だったのだと分かった。
繋がりのない一般人との結婚こそが彼にとっての最大のメリットなんだわ。
彼といると色々な人が話しかけてくるが女性からは上から下まで値踏みされ、居心地の悪さが否めない。
美容室でヘアメイクをしてもらい、ドレスを着ていなかったことを考えると恐ろしい。
彼は微笑みながら私の顔を見つめてくるため本当の夫婦になったのでは、と勘違いしそうになる。そのくらい彼は演技派だった。
『美波』と甘い声で呼ばれるだけで胸が高鳴る。
どれだけの人に挨拶をしたのだろう。
会う人会う人みんなに修吾さんは声をかけられる。
その度に私の腰を引き寄せ、妻だと紹介する。
私はどう振る舞うのが正解か分からず、ひたすら笑顔を貼り付け話を聞いていることしかできなかった。
挨拶がようやく落ち着いてきたように思えた頃、久しぶりに履くヒールで足が痛くなってきたが言い出すことが出来ずにいた。
しかしとうとう靴ずれがひどくなり皮がむけてしまったようだ。
一歩歩くたびに痛みが走る。
それでも私は笑って修吾さんの隣に立っていると後ろから声がかかった。
「こちらで話しませんか?」
彫りの深い背の高い男性でブルーグリーンの瞳が目をひいた。ハーフなのかもしれないこの男性は修吾さんの隣にいる私に直接声をかけた。
さっと修吾さんの手から私を連れ出すとフロアの隅へと案内された。
修吾さんは彼のその行動に驚いた表情を一瞬浮かべるが、話相手は会話をやめることなく話し続けており、私に声をかけることができなかった。視線は私のことを追いかけている気がするが私の手を引く彼は力強く戻ることができない。