クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
「ここに座って」
私はフロアの隅に連れていかれると椅子に座らされた。
彼は私の前に立つとポケットから絆創膏を出してきた。
「痛いでしょう。我慢しないで彼に言えばいいのに」
あ、靴ずれに気がついて座らせてくれたんだ。
「ありがとうございます。申し訳ありません」
私は絆創膏を受け取ろうとするが彼は私の足に触れ、絆創膏を貼ってくれる。恥ずかしくて、自分でやると伝えようとするがさっと彼がやってくれた。靴の方にも貼ってくれたのでクッションになり、だいぶ楽になった。
「すみません。すごく楽になりました」
私が彼にお礼を伝えると、ちょっと待っててと言い残し離れていってしまった。
足がつらかったので椅子に座れてよかったが、場違いだと言われてるようで悲しくなってしまった。
パーティーひとつこなせなくて申し訳ない。
このために彼と結婚したのに初日にして脱落した思いだ。ヒールひとつも履きこなせない女だと思われただろう。ふと見回すと煌びやかな世界でみんな胸を張ってこの場にいる。自信に満ちた表情を見ていると情けなくなる。
「はい、どうぞ」
気がつくと先ほどの男性が戻ってきていた。
手には山盛りになったお皿とグラスが二つ。
「食べないと元気が出ないよ。この人たちはどうせ自分達のアピールに忙しくて食べないんだからシェフがかわいそうだよ。ここのご飯は美味しいんだから」
彼は皿から手づかみでパクパクと食べ始めた。
私は彼のあっけらかんとした姿に笑ってしまった。
彼は私の顔を見ると「やっと笑ったね」と言い食事をすすめた。
見た目も綺麗なピンチョスにどれから食べようかと悩んでしまう。
「これ美味しいから食べてみてよ」
彼にすすめられるがままに口にすると本当に美味しくて思わず笑顔になった。
「君はこうやってちゃんと笑えるんだね。さっきから作り笑いが辛そうだったからさ」
「そう見えましたか?」
「うん。なんだか泣きそうな顔してた。笑ってるのに悲しい? って感じ」
自己嫌悪……
せめて笑っていなければ、と思っていたのにそれさえもできていなかったんだ。
あーあ、何にもいいところがないじゃない。
私は修吾さんに申し訳なくなってしまった。
「あの人と付き合ってるの?」
「え? いえ。主人です」
「え? 奥さんこんな辛そうなのに気にしてないの?気付かないの?」
「いえ、彼が悪いんじゃないです。私が言えなかっただけです」
私が慌てて修吾さんを庇うと彼は苦笑いしていた。
「夫婦なのに言い出せないの?」
彼が誰なのか分からないが、これ以上話していてはダメだと思った。修吾さんの評価が下がってしまう。
なんとなく人懐っこく感じたため、つい一緒にいてしまったがこれ以上ここにいてはいけないと思った。
「主人は優しい人です。絆創膏ありがとうございました」
それだけ言うと私は立ちあがろうとするが彼に手首を掴まれた。
「分かったからまだ座っているといいよ。足だって痛いだろう」
確かに痛いけれど、彼のそばにいる方が危険なのかもしれない。
「お世話になりありがとうございました」
気がつくと隣に修吾さんが立っていた。
いつもよりも言い方が強く、なにより彼を見る目が冷めていて怖い。
「美波、足は大丈夫か?」
私の前にかがみ込むと足をさする。
修吾さんのその仕草に私の脈が速くなる。
そのまま私を抱き上げると彼に頭を下げ、ドアへと向かった。
ざわざわと視線を集めるのを感じるが彼の力強い腕に抱かれると何も考えられなくなる。
廊下を出てエレベーターに乗り込むが彼は何も言わない。
美容室のあった階で下りるが反対方向に進む。誰もいない隅のコーナーにいくと私をベンチチェアに下ろしてくれた。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
私は修吾さんに謝る。
何もかも、彼のメリットになるようなことができなかった。
情けなくて涙がこぼれてきた。
「うまく振る舞えなくてごめんなさい。最後、私を運ばせてしまうなんて本当すみませんでした」
「足は大丈夫か? 早く気がついてやらなくてすまなかった。美波に痛い思いをさせてまでいる場所じゃないんだ。だからあそこで帰ってきてもなんの問題もない」
「でも、あなたの役に立たなかった。ごめんなさい」
何度謝っても仕方がないのは分かっているが、謝る以外の方法がわからない。
「美波、謝る必要なんてない。しいて言えば知らない男に触れられたことを謝るくらいじゃないか?」
修吾さんは座っている私の前で片膝を立てて座り込むと、私の足を自分の膝の上に乗せさせた。
私の足をそのまま撫でるように触ると驚いたことに口まで当ててきた。
「しゅ、修吾さん!」
私は慌てて足を引っ込めようとするが彼の手はそれを許さない。
ストッキング越しに感じる彼の吐息と唇の感触にドギマギしてしまう。
あまりのことに涙が引っ込んでしまった。
私はフロアの隅に連れていかれると椅子に座らされた。
彼は私の前に立つとポケットから絆創膏を出してきた。
「痛いでしょう。我慢しないで彼に言えばいいのに」
あ、靴ずれに気がついて座らせてくれたんだ。
「ありがとうございます。申し訳ありません」
私は絆創膏を受け取ろうとするが彼は私の足に触れ、絆創膏を貼ってくれる。恥ずかしくて、自分でやると伝えようとするがさっと彼がやってくれた。靴の方にも貼ってくれたのでクッションになり、だいぶ楽になった。
「すみません。すごく楽になりました」
私が彼にお礼を伝えると、ちょっと待っててと言い残し離れていってしまった。
足がつらかったので椅子に座れてよかったが、場違いだと言われてるようで悲しくなってしまった。
パーティーひとつこなせなくて申し訳ない。
このために彼と結婚したのに初日にして脱落した思いだ。ヒールひとつも履きこなせない女だと思われただろう。ふと見回すと煌びやかな世界でみんな胸を張ってこの場にいる。自信に満ちた表情を見ていると情けなくなる。
「はい、どうぞ」
気がつくと先ほどの男性が戻ってきていた。
手には山盛りになったお皿とグラスが二つ。
「食べないと元気が出ないよ。この人たちはどうせ自分達のアピールに忙しくて食べないんだからシェフがかわいそうだよ。ここのご飯は美味しいんだから」
彼は皿から手づかみでパクパクと食べ始めた。
私は彼のあっけらかんとした姿に笑ってしまった。
彼は私の顔を見ると「やっと笑ったね」と言い食事をすすめた。
見た目も綺麗なピンチョスにどれから食べようかと悩んでしまう。
「これ美味しいから食べてみてよ」
彼にすすめられるがままに口にすると本当に美味しくて思わず笑顔になった。
「君はこうやってちゃんと笑えるんだね。さっきから作り笑いが辛そうだったからさ」
「そう見えましたか?」
「うん。なんだか泣きそうな顔してた。笑ってるのに悲しい? って感じ」
自己嫌悪……
せめて笑っていなければ、と思っていたのにそれさえもできていなかったんだ。
あーあ、何にもいいところがないじゃない。
私は修吾さんに申し訳なくなってしまった。
「あの人と付き合ってるの?」
「え? いえ。主人です」
「え? 奥さんこんな辛そうなのに気にしてないの?気付かないの?」
「いえ、彼が悪いんじゃないです。私が言えなかっただけです」
私が慌てて修吾さんを庇うと彼は苦笑いしていた。
「夫婦なのに言い出せないの?」
彼が誰なのか分からないが、これ以上話していてはダメだと思った。修吾さんの評価が下がってしまう。
なんとなく人懐っこく感じたため、つい一緒にいてしまったがこれ以上ここにいてはいけないと思った。
「主人は優しい人です。絆創膏ありがとうございました」
それだけ言うと私は立ちあがろうとするが彼に手首を掴まれた。
「分かったからまだ座っているといいよ。足だって痛いだろう」
確かに痛いけれど、彼のそばにいる方が危険なのかもしれない。
「お世話になりありがとうございました」
気がつくと隣に修吾さんが立っていた。
いつもよりも言い方が強く、なにより彼を見る目が冷めていて怖い。
「美波、足は大丈夫か?」
私の前にかがみ込むと足をさする。
修吾さんのその仕草に私の脈が速くなる。
そのまま私を抱き上げると彼に頭を下げ、ドアへと向かった。
ざわざわと視線を集めるのを感じるが彼の力強い腕に抱かれると何も考えられなくなる。
廊下を出てエレベーターに乗り込むが彼は何も言わない。
美容室のあった階で下りるが反対方向に進む。誰もいない隅のコーナーにいくと私をベンチチェアに下ろしてくれた。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
私は修吾さんに謝る。
何もかも、彼のメリットになるようなことができなかった。
情けなくて涙がこぼれてきた。
「うまく振る舞えなくてごめんなさい。最後、私を運ばせてしまうなんて本当すみませんでした」
「足は大丈夫か? 早く気がついてやらなくてすまなかった。美波に痛い思いをさせてまでいる場所じゃないんだ。だからあそこで帰ってきてもなんの問題もない」
「でも、あなたの役に立たなかった。ごめんなさい」
何度謝っても仕方がないのは分かっているが、謝る以外の方法がわからない。
「美波、謝る必要なんてない。しいて言えば知らない男に触れられたことを謝るくらいじゃないか?」
修吾さんは座っている私の前で片膝を立てて座り込むと、私の足を自分の膝の上に乗せさせた。
私の足をそのまま撫でるように触ると驚いたことに口まで当ててきた。
「しゅ、修吾さん!」
私は慌てて足を引っ込めようとするが彼の手はそれを許さない。
ストッキング越しに感じる彼の吐息と唇の感触にドギマギしてしまう。
あまりのことに涙が引っ込んでしまった。