クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
毎日ネットを見ては営業をかける電話をしているがなかなかアポイントの取れない日が続いており、正直焦ってきていた。
母が営業に行けるとは思えない。おっとりしていて言われるがままにされてしまうだろう。
妹に営業に飛び込ませるようなことはさせたくない。
私がどうにかしなければと思うがどこにも相手にされず空回りしていることに気がついているが何もしないで手をこまねいてもいられない。
電話でアポイントをとらせてもえないのならやはり直談判で行くしかないのかもしれない。商品を味見してもらわなければ話は始まらないのではないかと思う。
けれど配り歩くにしても高価なものなのである程度可能性のあるところでないと費用がかさみすぎる。今のはなみずき製菓にとっては大きな出費となりかねない。
はぁ、とため息がこぼれてしまう。
「いらっしゃいませ」
妹の由梨子が声をかけた。
私も入り口に目を向けると少し前に来たあのスーツの男性だった。
「いらっしゃいませ」
私も声をかけると彼に近づいて行った。
「先日はありがとうございました」
「いや、やはり美味しかったよ。またいただこうかと思うのだがまたおすすめを教えて欲しい」
あれから1カ月経ちすでにイチゴは無くなっている。ちょうど今日から5月に入り季節限定はマンゴーだ。
「季節限定はマンゴーになりますね。今日からですがこれも毎年大人気です」
彼の手にのせるとまた放り込むようにポンっと口に入れる。すると彼は大きく頷いた。
「あとはさっぱりした梅もあります。口の中が梅ジュースのような感じになりすね。金平糖で梅ジュースを作ることもあるようですがこれならすでに梅味なので炭酸を飲みながら食べてもいいかもしれませんね」
また彼に試食を渡す。
「はなみずきさんはここにしかお店はないんですか? ネットもやっていらっしゃらないですよね?」
「そうですね……父が、社長がネット販売はしないと昔ながらの人でして。お恥ずかしいですが他店を持つほどの力もなくて」
私が小さな声で話すと、彼は小さく頷いた。
「こんなに美味しい金平糖は食べたことがない。もっと世の中の人に知ってもらえたらいいと思うが」
それを聞いて嬉しくなり、私の声はつい大きくなってしまった。
「そうなんです! うちのは美味しいんです。値段は高いけれど全然違うんです! だから販路を広げたいんですけれどなかなかうまくいかなくて、このままだとうちは……」
「ちょっと、お姉ちゃん」
由梨子に咎められ私はシュンとした。
「失礼しました」
妹と頭を下げると彼は思案顔になり、なぜか「大丈夫だ」と言った。
今日もみかんとコーヒーに加えレモン、マンゴー、梅を2袋ずつ購入することを決めてくれた。
またブラックカードを差し出すと会計を済ませ、彼は店を出た。
「格好いい人だったね。ブラックカードも初めて見たよ」
「本当だね。あの容姿で金平糖買っていくってちょっと可愛く思える。でも……ついうっかりうちの事情を漏らしちゃった。なんだか恥ずかしいわ」
「本当にことだからね。でもどうにかしないとお店はもたないよね」
由梨子も店が先細りであることを分かっている。
代々続いたはなみずき製菓を潰したくない気持ちは私と同じはず。
「どうにかしないとね……」
私は呟くようにそう言った。
母が営業に行けるとは思えない。おっとりしていて言われるがままにされてしまうだろう。
妹に営業に飛び込ませるようなことはさせたくない。
私がどうにかしなければと思うがどこにも相手にされず空回りしていることに気がついているが何もしないで手をこまねいてもいられない。
電話でアポイントをとらせてもえないのならやはり直談判で行くしかないのかもしれない。商品を味見してもらわなければ話は始まらないのではないかと思う。
けれど配り歩くにしても高価なものなのである程度可能性のあるところでないと費用がかさみすぎる。今のはなみずき製菓にとっては大きな出費となりかねない。
はぁ、とため息がこぼれてしまう。
「いらっしゃいませ」
妹の由梨子が声をかけた。
私も入り口に目を向けると少し前に来たあのスーツの男性だった。
「いらっしゃいませ」
私も声をかけると彼に近づいて行った。
「先日はありがとうございました」
「いや、やはり美味しかったよ。またいただこうかと思うのだがまたおすすめを教えて欲しい」
あれから1カ月経ちすでにイチゴは無くなっている。ちょうど今日から5月に入り季節限定はマンゴーだ。
「季節限定はマンゴーになりますね。今日からですがこれも毎年大人気です」
彼の手にのせるとまた放り込むようにポンっと口に入れる。すると彼は大きく頷いた。
「あとはさっぱりした梅もあります。口の中が梅ジュースのような感じになりすね。金平糖で梅ジュースを作ることもあるようですがこれならすでに梅味なので炭酸を飲みながら食べてもいいかもしれませんね」
また彼に試食を渡す。
「はなみずきさんはここにしかお店はないんですか? ネットもやっていらっしゃらないですよね?」
「そうですね……父が、社長がネット販売はしないと昔ながらの人でして。お恥ずかしいですが他店を持つほどの力もなくて」
私が小さな声で話すと、彼は小さく頷いた。
「こんなに美味しい金平糖は食べたことがない。もっと世の中の人に知ってもらえたらいいと思うが」
それを聞いて嬉しくなり、私の声はつい大きくなってしまった。
「そうなんです! うちのは美味しいんです。値段は高いけれど全然違うんです! だから販路を広げたいんですけれどなかなかうまくいかなくて、このままだとうちは……」
「ちょっと、お姉ちゃん」
由梨子に咎められ私はシュンとした。
「失礼しました」
妹と頭を下げると彼は思案顔になり、なぜか「大丈夫だ」と言った。
今日もみかんとコーヒーに加えレモン、マンゴー、梅を2袋ずつ購入することを決めてくれた。
またブラックカードを差し出すと会計を済ませ、彼は店を出た。
「格好いい人だったね。ブラックカードも初めて見たよ」
「本当だね。あの容姿で金平糖買っていくってちょっと可愛く思える。でも……ついうっかりうちの事情を漏らしちゃった。なんだか恥ずかしいわ」
「本当にことだからね。でもどうにかしないとお店はもたないよね」
由梨子も店が先細りであることを分かっている。
代々続いたはなみずき製菓を潰したくない気持ちは私と同じはず。
「どうにかしないとね……」
私は呟くようにそう言った。