クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
近くにあった公園に入ると修吾さんはベンチに腰掛けた。
私にも隣に座るようベンチをぽんぽんとした。

少し距離をあけ、私もベンチに座った。

「美波、痩せたな。体調どうだ?」

「うん。大丈夫」

彼が私の体調を知る由もないはずなのにどうして聞くのだろう。
何を話したらいいのかわからず、無言の時間が続いた。

「ちょっと待ってて」

彼は近くの自販機に行き、温かい飲み物を買ってきてくれた。

「ありがとうございます」

彼はまたベンチに座るが私の隣にピッタリとくっついてきたので驚いた。

「美波、俺は離婚はしない。前にも言ったが妻としての役目は果たしてくれてるじゃないか。それなのになぜ離婚したい?」

「ごめんなさい。実家へこんなに手を差し伸べてもらったのに私はこれ以上結婚生活を続けて行くことが出来ません。両親にも話して今いただいている仕事からも手を引いてもらうようにしますから許してください」

私は頭を下げた。

「そんなに俺と別れたい?」

「はい」

「そうか。そんなに美波に嫌われるようなことをしちゃったのかな」

いつもの堂々とした姿はなく、そっと彼を見ると頭をもたげていた。

「修吾さんは何も悪いところなんてないです」

「ならどうして離婚するなんていうんだ? 理由を教えてもらいたい」

理由なんて言えるわけがない。
赤ちゃんは絶対に産みたい。
彼のことが好きだから離れたいなんておかしいのはわかっている。けれど彼から離れないとこの子は産めない。
彼から離婚したいと言われるまで一緒にいては赤ちゃんが産まれてしまう。

「美波、他に好きな人が出来たのか?」

私を伺うように聞いてきた。

「まさか! そんなことあるわけないです」

「ならどうしてなんだろうな。美波に離婚しようと言われるくらい甲斐性がないんだろう」

「違います。そんなことありません」

彼にそんな卑屈な思いをさせたのかと私は焦り、つい口に出てしまった。

「赤ちゃんができたんです。ごめんなさい。私が育てるので産ませてください」

私は涙ながらに彼に訴えた。
諦めて欲しいと言わないで!

どれだけ待っても修吾さんはリアクションがない。
私は恐る恐る顔を少しあげると修吾さんは手で顔を覆っていた。

「なんで、なんで言ってくれないんだ! そんな大切なことを言わずに離婚するつもりだったのか?」

「すみません。でも産みたいんです。あなたは頼りませんからどうか許してください」

「美波!」

名前を呼ばれビクッとした。

膝に乗せていた手に彼は手を重ね、握りしめてきた。
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