クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
ゴールデンウィークに入り、はなみずき製菓は通常よりも多くのお客様が来ていただける。

高温多湿を避けさえすれば日持ちのするお菓子。おやつとして食べるだけでなく砂糖の代わりに使うこともできるので考え方で使い道は沢山ある。
そんな提案をするのも私と由梨子の仕事。
それで一つでも多くの商品を購入いただけるよう力が入る。

この1週間、彼からは何の連絡もなかった。
あの日言われたことは幻だったのではないかと思った。
手元に残るこの名刺だけが現実だと教えてくれるが、これからどうなるのかわからない。

ゴールデンウィーク最終日。
日曜日の夜になり客足も減り、ようやく最後のお客様を送り出した。

「今年のゴールデンウィークはお客様少し減ったかな」

由梨子がそんな呟きを漏らした。
たしかに昨年に比べると少しだけ客足が少なく思う。けれど客単価は上がってるようにも思うので由梨子を力づけた。

「大丈夫。今までもやってこれたんだからこれからだってどうにかなるよ」

「うん」

由梨子と閉店準備をして家に帰るとお母さんが食事の準備をしていた。
私たちは手を洗い食卓につこうとしたときスマホが鳴っていた。

「あ、ごめん。先に食べてて」

私はスマホで着信の名前を見て表情を固くした。
多岐川さんからだ。
スマホを持つと2階の自室に向かった。

「お待たせしました。佐々木です」

『久しぶり。元気か?』

「はい」

『次の休みはいつだ?』

社交辞令の会話もそこそこに本題に入る。

「明日です」

『ちょうどよかったよ。明日予定はあるか?』

「ないです」

『わかった。明日迎えにいく。11時に行くから』

それだけ言うと電話は切れた。
やっぱり彼との話は本当だったのかなと感じるが実感は薄いまま。
明日どんな話をするのか気になるけれどなるようにしかならない。
はぁと諦めにも似たため息がつい出てしまった。
悪い条件でないことはわかっている。
それでもやはり結婚って好きな人とするものだと思っていたのでまさかこんなことになるなんて想像もしていなかった。
ここまできたら腹を括るしかない。
私は手を強く握ると、よし!と気合を入れ足を叩いた。
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