クールな御曹司は離縁したい新妻を溺愛して離さない
翌朝、普段なら寝ている私だが今日はそんなことしていられない。
ふと気がついたことがあったからだ。

どんな格好をしたらいいの?

彼を毎回見かけるのはスーツ姿。
そのスーツも三揃いのかっちりとしたもので仕立てのいいものだと分かる。
スーツはもちろん彼を引き立てるものだが彼はスーツを着ていなくても顔立ちがいいためどんな格好をしていても何を着ても似合うだろう。
短髪に切れ長の目、薄い唇、引き締まった筋肉がスーツの上からでもわかるバランスの取れた身体。握手した時に感じたガッチリとした手を思い出した。
彼のことを思い出せば、思い出すほどに欠点が見つからない。
そんな彼と今日待ち合わせをしてしまった。
私は最初の時はスーツ、しかも転んで膝は出血して電線したストッキングだった。今思い出すだけでもあの格好は恥ずかしい。そのあと彼と会ったのは制服の時だけ。

平日である今日、彼がスーツで来るのか私服で来るのかはわからないが彼の隣に並べるだけの見た目にならないと……。いつものようにTシャツとデニムで行くわけにはいかない。

私は朝からクローゼットをかき回したが家から制服で仕事に行き、帰るとお風呂には入りルームウェアに着替えるため私服が極端に少ない。休みの日はもっぱらデニムで過ごすのでいくら探してもいいものが出てこない。
渋々由梨子の部屋をノックした。

「由梨子、悪いんだけど服を貸してもらえない?」

「え? お姉ちゃんどうしたの?」

私が服に気を使うことなんて全くない。
それがゆえにあのクローゼットになるのだから。
私と反対に可愛いものが好きな由梨子は平日にショッピングに出かけることも多く流行に敏感だ。

「今日友達と出かけたいんだけど……あの、服を貸してもらえない?」

「え? 珍しいね。いつものメンバーじゃないの?」

「あ、うん」

「ふうーん。誰とかなぁ。今日は聞かないであげるね」

由梨子は意味深な顔をしているが、私の顔を見て察してくれ突っ込まずにいてくれた。

「どんな服がいいの?」

「わからない。わからないのよ。何を着たらいいのか」

私が頭を悩ましているのを感じてくれるが相手の想像がつかないみたいで困っている。
とりあえずキレイめにしてもらえるようにお願いした。

するとベージュのワイドパンツに茶のサマーニットを合わせてくれた。春先で夕方は寒くなるため同じ茶色のカーディガンを合わせてくれた。
バッグと靴は自分のものを合わせると11時まであと少しになった。
外に出て待つが振り返ると由梨子が覗き見していることに気がついた。
もう!
しっしっ、と手で合図すると苦笑いして家に入って行った。
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