あの日の返事をもう一度。
 『ごめん』の一言も言えないような俺と結ばれなくてよかったな。

 最低な俺じゃなくて、斗真みたいなやつと付き合えてよかったな。

 いろんな意味を含んだ『よかったな』と言う一言に麻央は口を大きく開けて、ポカンとしていた。

 「『よかったな』って…どういうこと…?」

 少し低い声で、麻央は俺に聞く。

 わかってる、くせに…

 「斗真みたいなやつと付き合えて、よかったな、って意味だよ」

 言い終わって、唇を噛み締める。

 これから言われることを、覚悟するように、グッと痛みを与えた。
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