こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
三月に入り、小春たちの準備は着々と進んでいた。
春乃とは何回も打ち合わせ、メニューの試作を繰り返し、お店のコンセプトをまとめる。
食器は備え付けのものがあったので、それを借りることにし、ワンプレートに三品のおかずを盛り合わせ、ご飯、汁物、を基本形にすることにした。
お店は『コハルノ食堂』と名付けた。
二人の名前が入った店だ。頑張ろうねとお互い励まし合った。
開店二週間前、小春と春乃は『こばとヴィレッジ』に挨拶に来ていた。
村長さんとは何度か会っているが、これから仲間になるヴィレッジの人たちとの顔合わせがまだなのだ。
村長さんは春乃を見た時、「きれいになったねぇ」と眼を丸くしていた。
小春には「びっくりするぐらい変わらない」と言ったくせに。
むーっと思うが、横目で春乃をチラッと見て、やむを得ないとあきらめた。
背が低くて童顔な小春と違い、春乃はスラっとしていてとても綺麗なのだ。
「春春コンビで頑張っておくれ」
村長さんの言葉に同調するように、ポスターの〝こばと〟も『気張れよ』と言うようにキリッと見ていた。
春乃と二人、園舎を回り始める。
絵画のギャラリー『琥珀堂』の店主は小春たちの二つ上。
同じ時期に幼稚園に通っていたので、当時の先生の話で盛り上がる。
「ヴィレッジで働いている人の中では、俺たちの代が一番多いんだ。アクセサリー作家のユミちゃん、革職人のケイ、給食室カフェのサラ、みんな同じ歳だよ」
みんなでヴィレッジを盛り上げていこうね、と励ましの言葉をもらった。
アクセサリーショップ『Jolie』の店主ユミも小春たちのことも歓迎してくれて、一緒に頑張ろうとエールを送ってくれる。
「みんな優しそうな人で安心した」
「ほんと。それに同じ歳の人がたくさんいて羨ましい」
私たちと同じ歳の人いるのかな、と言いながら歩いていると、『窯元源基』という店の前に来た。