こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
『窯元源基(かまもとげんき)』
最近出店したお店らしく、小春も今回初めて見た。
店の入り口には『陶芸教室開催中』という張り紙がしてある。
「やってみたい!」
春乃が興味津々でお店を覗き込んだ。
店内には器やお皿がたくさん並べられ、店の奥で陶芸家と思しき人がろくろを回している。
「すみません」
春乃が声をかけると、その人は手を止めてこちらに来てくれた。
「四月から給食室カフェに出店する『コハルノ食堂』と申します」
春乃と小春はそれぞれ名刺を手渡した。
お店に置くショップカードとは違う個別の名刺だ。
「お店の名前だけじゃなくて、私たちの名前も覚えてもらわなきゃ」
春乃がそう言って、ヴィレッジで働く人たちに渡すための名刺をわざわざ作ってくれたのだ。
陶芸家は、眉を寄せて名刺を見ている。
日本手ぬぐいを頭に巻いた、がっちりとした体つきの男の人だ。
太い眉に大きな目が印象的。
なんか見たことがあるような…。でも、ちょっと怖いかも。
小春はひそかに緊張していた。
「春乃とチビ春?」
懐かしい呼び名で呼ばれ、小春は驚いて陶芸家を見上げた。
「俺だよ。源基。澤田源基(さわだげんき)」
「源ちゃん!?」
小春は腰を抜かしそうになった。
源基は、幼稚園の三年間ずっと同じ組だった男の子だ。
当時から体が大きくガキ大将で、小春は何かとちょっかいを掛けられていたのだ。
「チビ春は相変わらずチビなんだな」
ふふんと鼻で笑うように源基が言う。
〝チビ春〟というのは当時の男の子たちのからかい文句の一つ。
体の小さな小春はそう呼ばれていたのだ。