こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
給食室カフェは、今日はフレンチの日だ。
同じ場所を共有するので、決まり事を聞いておいた方がいい。
小春たちは、自分たちの仕事場となる給食室に向かった。
『フルール ドゥ スリズィエ』のシェフ兼店主サラは、小春を見下ろしながら「成人してる?」と真剣に聞いた。
「してますっ。二十五歳です」
「私と二つしか違わないの?」
サラが目を丸くする。
その驚きを小春は真摯に受け止めた。
サラはいかにも大人の女性という感じの人で、確かにこの人と小春が二歳違いというのは、人類の神秘と言えるだろう。
「……スミマセン」
謝らなくていいけど、とサラは吹き出した。
サラは姉御肌のサバサバした人だった。とても綺麗な人で、〝美人シェフ〟と噂になっていると聞いたけれど、なるほどと納得する。
ゴミの出し方や食器や調理器具の扱いなど、かなり細かく注文をつけられたが、もっともですというようなことばかりだったので素直に頷ける。
「お互い気持ちよく作業ができるように協力してね」
ハイッと元気よく返事をすると、いい子ねと頭を撫でられた。
小春もヴィレッジに新しく年下の子が入ってきたとき、いい子ねと頭を撫でることができるだろうか。
背伸びをして必死に手を伸ばす自分の姿を想像して、無理だなと想像を打消した。
背は低いが、志は高く。
「お店がんばろうね」という春乃の言葉に大きく頷いた。