こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
猫背の背中をグッと伸ばして、もじゃもじゃ頭が振り返る。
「もう昼か…」
「昼じゃありませんよ、もう二時です。ケイさん、お昼ご飯くらいはちゃんと食べましょう」
小春が諭すように言うと、「ハイ…」と素直な返事が返ってきた。
革職人のケイは、いつも昼ご飯を買いに給食室に来る。
でも時々、作業に没頭しすぎて来ない日があるのだ。
初めは買いに来たり来なかったりするケイを、あまり気に留めていなかった。
外で食べたり、出勤途中に買ってきたり、そういう日もあるだろうと思っていたからだ。
でも、「給食室に行きそびれた日は、昼食を抜いているんだ」という言葉を聞いてしまった。
これは小春は大いに悩ませた。
『お昼を抜くと聞いたからって、お節介を焼くのはどうなの?』
そう思う一方で、
『でも、聞いてしまった以上、お腹を空かせた人を放って置いていいの?』とも思う。
悶々と悩んだ結果、二時を過ぎてもケイが来ないときは、配達するようになったのだ。
届けた方が小春の精神上よいと判断したので。