こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「『こばとヴィレッジ』は『こばと幼稚園』卒園児の夢を応援します!」
大きなポスターにはそんな言葉と懐かしい〝こばと〟のマークが描かれていた。
『こばと幼稚園』を象徴するその〝こばと〟は、ぷっくりとした丸い体になぜかキリッとした鋭い目をしている。
『小鳩というよりは、太った鷹やワシっていう感じにもみえるんだよね』
夏川小春(なつかわこはる)は、しげしげとポスターを見ながら、そう思っていた。
どうして幼稚園のシンボルマークの小鳩をこんな風にしたのかというと、未来を見据えてどんな困難にも勇敢に立ち向かってほしいという願いが込められているそうだ。
幼稚園児にそんなことを求めても、ハードルが高いと思うんだけど。
現に小春が幼稚園児の頃は、「ハトさんの目こわい」といつも思っていた。
でも、この〝こばと〟を久しぶりに見て、緊張が和らいだ気がする。
眼光鋭いこばとさん。どうかまたお近づきになれますように。
小春はポスターに向かってパンパンっと柏手を打ち、「なにとぞお願いします」と頭を下げた。
そして、よしっと気合を入れると、元『こばと幼稚園』、現在は『こばとヴィレッジ』と呼ばれる施設の門をくぐった。