こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
三時近くなると、またお客様が増えていく。
春乃が作るケーキと、村長さんのコーヒーが目当てだ。
「おう。ケーキ食いに来てやったぞ」
鷹揚に言いながら源基がやってきた。
「え!?さっきお昼ご飯たべたよね?」
小春が驚くと、甘いものは別腹って言うだろ、と乙女のようなセリフが返ってきた。
源基も必ず昼ご飯を食べに来てくれる常連さんだ。
ケイとは違い、源基は『仕事に熱中しすぎて食べ忘れ』なんてことはありえない。
堂々とお店に『休憩中』という張り紙をして、給食室でゆっくり食事をしていく。
「日本人は働きすぎなんだ。ちゃんと休憩しないと」
もっともらしいことを言いながら、たっぷり一時間滞在するのだ。
それなのに、またケーキって…
「源ちゃん、そんなことしてたら太るよ」
小春が心配そうに言うと、店の売上に貢献してやってるんだろと叱られた。
心配していた源基との再会だが、さすがに大人になった源基は意地悪をしてこなかった。
偉そうにアレコレ言ってくることはあるけれど、「はいはい」と聞き流せるくらいのレベルだ。
小春も、砂場のおだんごを壊されて泣いていた頃の小春ではない。
源基を適当にあしらいながら、私も大人になったのねと感動していた。