こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「ねぇ、今日も配達行かないの?」
春乃がさりげなく訊ねた。
「うん。食べたかったら買いに来るでしょ。お節介だったなと気づいたの」
小春はランチの後片付けをしながら答えた。
「ケイさん、お腹すかしてるかもしれないよ?」
「大人なんだから大丈夫よ」
「そうかな」
「気になるなら春乃が行けば?」
取り付く島もない態度を取る小春に、春乃は困ったような顔をした。
あの後、しばらくの間ケイは、ちゃんとテイクアウトしにやってきた。
いつもなら、嬉しくて厨房から手を振るところだが、なるべく見ないようにし、何か言いたげにしているような様子にも気づかないふりをする。
でも、そんな態度を取れば取るほど、子どもじみた自分が情けなく、居たたまれなくなっていく。
こうして、ケイとの距離はどんどん開いていった。
小春が突然配達に行かなくなったので、春乃が心配してくれているのもわかっている。でも、独りよがりだった自分を知られるのが恥ずかしくて、春乃にも本当のことを話せない。
毎日、悶々とした日々が続いていた。