こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「おい、茶碗が焼きあがったぞ。見に来い」
源基が給食室の外から声をかけた。
春乃と二人、ああでもないこうでもないとさんざん悩んでデザインを決めた。
真っ白のご飯が映える濃紺の茶碗。
「先に見に行ってもいい?」
小春がワクワクしながら言うと、春乃は、どうぞーと笑った。
「いい感じの色に仕上がったぞ。思った通りの色が出ている」
「そうなの?わぁ、楽しみ!」
大股で歩く源基の横を小走りになりながら小春は着いていく。
ちょうどケイの店の前を通りかかった時、店の引き戸が開いた。
「あ…」
ケイは小春を見て立ち止まった。
「気づいたらまた二時になっちゃって。もうランチ終わったよね?」
小春と源基を交互に見ながら、控え目な声で小春に問いかける。
「はい。もう終わってます」
「そうか…。わかった。ごめんね、引き止めて」
ケイは源基に軽く会釈をすると、そのままガラガラと戸を閉めた。
「ケイさ…」
小春は咄嗟に呼び止めようとしたが、引き戸は閉められた後だ。
「おい、行くぞ」
源基は不機嫌な声で小春を促し、歩き出す。
「うん…」
小春は閉められた引き戸を見ていたが、どんどん歩いていく源基の後を慌てて追いかけた。