こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「じゃあ、来週ね」
営業時間が終わり、春乃は帰っていった。
いつもは小春もすぐに帰るのだが、今日は帰る気にならない。
『そうか…。わかった。ごめんね、引き止めて』
そう言ったときのケイの顔が忘れられない。
普段からあまり表情が変わらないケイだが、いつも以上に無表情に見えた。
それに、痩せた体がなおさら薄くなっているような気がした。
小春が配達に行かない日は、本当に何も食べずに仕事をしているのだろうか。
一日置きでも昼食を抜くと、あんなに痩せていくもの?
やっぱり気になって仕方がない。
次の火曜日は、配達しようかな。
しょうがなく食べているとしても、何も食べないでいるよりはマシかも。
もう一度だけ配達をして、迷惑そうだったら止めてしまえばいいんだし。
小春は、ただのお節介焼きでいいじゃないかと思うようになった。
よし!
そうと決めたら火曜日のメニューを考えよう。
小春は久しぶりに明るい気持ちで厨房に戻った。
今日は天気が悪く、土曜日にしては客の入りが悪かった。
食材がかなり余ったので、このままここで試作をすることにする。
冷蔵庫の中身を確認して料理を始めた。
包丁でトントンと野菜を切り、鍋でコトコト煮込む。
厨房は美味しそうな匂いが充満し、それだけで穏やかな気分になった。
やっぱり匂いは重要だ。美味しそうな匂いだけで、料理の半分は成功したと言える。
味見をして、うんと頷いた時、給食室の扉が開いた。