こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~

近年日本では、保育園の数が増えて幼稚園の数は減っているらしい。
子どもの減少に加えて、両親ともに働く家庭が増加し、幼稚園ではなく保育園に通う子どもが増えている。そんな時代の流れの中で、『こばと幼稚園』も三年前閉園した。

長年多くの子どもたちが通っていた幼稚園なので、閉園式にはかなりの数の卒園児が集まった。

みんなが寂しい思いで園舎に別れを告げ、園長先生の最後のお話を静かに聞いている時に、園長先生は『こばと幼稚園』をそっくりそのまま『こばとヴィレッジ』という貸しスペースにすることを発表したのだ。

「こばと幼稚園の卒園児であれば、誰でも園舎のお部屋を借りて商売をしたり、教室を開いたりできますよ。もちろん審査はありますが」

「商売!」「教室!?」

園長先生の突然の発表に、卒園児は驚きの声を上げた。
てっきり園舎は取り壊されると思っていたのだから。

「『こばと幼稚園』は、夢を追いかける卒園児を応援する場として、『こばとヴィレッジ』に生まれ変わります!」

そう宣言した園長先生は、こばと幼稚園のシンボル〝こばと〟のポスターを高く掲げた。もちろん、こばとの眼がいつも以上にキリリとしていたのは言うまでもない。


こうして貸しスペースとして生まれ変わった『こばとヴィレッジ』は地元でも話題になり、今では人気スポットになりつつある。

雑貨店やアクセサリーショップなどのお店もあれば、ヨガやダンスの教室も開かれ、給食室をリフォームした「給食室カフェ」もある。

こばとパンを作るパン屋や、こばとのぬいぐるみを作って売る人もいる。

『こばとヴィレッジ』は、個性あふれる卒園児が夢を追いかける場所になったのだ。

< 3 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop