こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「いただきます」
ケイは丁寧に手を合わせ、食事を始める。
思えば一緒に食事をするのは初めてだ。パクパクとすごい勢いで食べるケイの姿を正面から見て、なぜか涙が出そうになった。
「ちゃんとお昼ご飯を食べないから、そんなにお腹がすくんですよ」
「そうだね…」
ケイは反省するように頭を下げたが、すぐに食事を再開する。
そんな姿を見ながら、小春も箸を進めた。
「美味しかった…。ごちそうさまでした」
満足気に吐息をもらし、ケイはまた丁寧に手を合わせて頭を下げた。
「コーヒー淹れますね。村長さんほど上手に淹れられませんけど」
コーヒーを淹れる小春を、ケイはじっと見ている。
「ん?」というように首をかしげてみせると、ケイは微笑みながら静かに首を振った。
「謝りたいと思ってたんだ。この前、サラが来ていることを言わなくて、無駄な配達をさせたから」
でも、ちゃんと届けてくれた弁当は夕食に食べたんだよ、と真剣な顔でケイは謝った。
「あの時は本当にごめん。それに、いつも配達してくれてることに甘えて、当たり前みたいになってたことも。もう許してもらえないかと思ってたから、今日は嬉しかった」
そう言ってケイは柔らかく笑う。
「許してもらえないって。私が怒ってると思ってたんですか?」
小春が驚いて言うと、「えっ、違うの?」とケイも驚いた顔をする。
「配達も来てくれなくなったから、嫌われたと思ってた」
「私はケイさんに無理やりお弁当を押し付けてたのかなと思ったんです。全部独りよがりだったんだと思ったら恥ずかしくなって…」
「違うよ!独りよがりなんかじゃない。お弁当の配達、本当に嬉しくて楽しみにしてた。『コハルノ食堂』のご飯、大好きなんだ」
ケイは恥ずかしそうに、もじゃもじゃの髪を掻いた。
「じゃあ、また配達してもいいですか?」
「うん、正式にお願いするよ。いつも買いに行きそびれちゃうから」
二人で顔を見合わせて笑いあった。