こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「源ちゃん?」
小春が不思議そうに顔を窺ったとき、源基はいきなり小春の手首を掴んだ。
「どうしたの?やだなぁ、怖いよ」
手を振りほどこうしたが、源基はますます力を入れて小春の手を握った。
「小春。俺、おまえのことが好きだ。気づいてくれるのを待ってたけど、全く気付く気配がないし」
小春は驚きで目を見張る。
まさか、そんなこと。一瞬でも考えたことがなかった。
「いつもからかってばっかりだけど、ずっとおまえのことが好きだったんだ」
源基の目が小春を強く射貫く。
源基が真面目に言っているということは疑いの余地がなかった。
小春はなんとか口を開いたが、うまく声が出ない。
掠れた声で辛うじて答えた。
「ごめん。そんなこと考えたこともなかった」
源基の顔がせつなく歪み、小春の胸も痛んだ。
「俺じゃダメか」
「源ちゃんは幼なじみで、ヴィレッジの大切な仲間だよ…」
源基の気持ちを受け止められたら、どんなに幸せだろう。
でもダメだ。小春にも捨てきれない気持ちがあるのに…
源基の手に力がこもる。
「源ちゃん、痛いよ。離して」
お願い、と言う小春の目から涙が零れ落ちた。