こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「やめなよ。泣いてるじゃないか」
小春はハッとして声がする方を見た。
給食室の戸口にケイが立っている。
ケイは足早に近寄ってきて、小春の手首から源基の手をそっと引き離した。
「大丈夫?」
声をかけられ、何度も頷く。
放心したような源基に、小春は小さく声をかけた。
「ごめんね、源ちゃん。でも、ありがとう…」
涙声の小春を見て、源基は「悪かった」とつぶやくように言うと部屋を出て行った。
しーんとした給食室に、小春がすすり泣く声だけが響き、ケイはそっと小春の腕を取った。
「ちょっと赤くなってる。痛い?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
ケイは涙が止まらない小春を椅子に座らせた。
「あんまりうまく淹れられないけど、村長さんの手伝いをしたことがあるんだ」
そう言って、コーヒーを淹れてくれる。
「はい、どうぞ」
差し出されたカップからはコーヒーのいい香りがして、冷えた手に温もりが伝わった。
一口飲むと、その温もりは胸の方まで広がっていく。
「おいしい…」
「そう?よかった」
ケイは微かに微笑んだ。