こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
「え!?」
「桜木っていう名字はどうかなと思って。桜木小春だと、夏なのか春なのかって迷わなくてすむけど」
ケイは照れくさそうに横を向いた。
驚きで小春は固まった。
嬉しいという感情よりも、戸惑いの方が強い。
「ケイさん、サラさんと結婚するんじゃ…」
小春は困惑したまま呟いた。
「は!?」
いつも物静かなケイが珍しく大声を出した。
「もしかして、サラの名前も知らないの?」
「サラさんの名前…」
また斜め上を見ながら考える小春に、ケイは首を振った。
信じられない、とぶつぶつ言いながらレジに向かう。
レジの横に、サラのお店と小春たちのお店のショップカードが置いてある。
ケイは、サラのカードを取って小春に渡した。
『フルール ドゥ スリズィエ』
サラのお店の名前だ。
「裏を見てね」
同じことを言われて、慌てて裏を見る。
そこには、『シェフ 桜木沙良』と書いてあった。