こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
*
「小春の疎さを甘く見ていた私が悪かった…」
春乃は頭を抱えていた。
「そんな言い方ひどい」
小春が抗議すると、「だってあんまりでしょ!」と叱られた。
「どうして、サラさんとケイさんが結婚すると思うのよ!いや、それ以前にどうして二人が双子だって知らないのよっ」
「逆に聞きたいくらいなんだけど。どうして春乃は知ってるの?」
「名字が一緒だし、顔もなんとなく似てるじゃん。私はここで働き出してすぐにユミさんに聞いたよ。ケイさんとサラさんは双子ですかって」
「すごい!二人の名前をちゃんと知ってたんだ。でも双子ってことまで見抜くなんて、春乃は探偵になれるんじゃない?」
春乃は、尊敬のまなざしでみる小春のおでこをペシッと叩いた。
「サラさんが結婚するっていう話をしてた時、様子がおかしかったのはそのせいだったんだね。おかしいと思ったのよ。サラさんと琥珀さんがつきあってるのを、小春が知ってるわけないもの」
「えっ!サラさんは琥珀さんと結婚するの!?」
仰天する小春に、春乃は諦めたように首を振った。
「これからは料理以外のことにも関心を持ちな。同僚の名前を知らないなんてひどすぎるよ。それと、いただいた名刺は裏まで確認すること!」
「…ハイ」
しょんぼりと項垂れる小春の肩をポンとたたき、「でも、よかったね。ケイさんと仲よくしなよ」と春乃は優しく声をかけた。