こばとヴィレッジで夢を叶えましょう~ある革職人の恋のお話~
昼を過ぎて源基がやってきた。
「あー、腹減った。今日のおかずは何だ?」
「どんな時でも源ちゃんは元気だね」
呆れたように言いながら、春乃はお茶とおしぼりを出した。
「うるせー。飯さえ食ってれば元気になるんだよ」
源基は喚いた後、厨房に向かって声をかけた。
「小春、この前は悪かったな。白菜美味かった。サンキュー」
小春は手を拭きながら、厨房を出て来た。
「あの…。源ちゃん」
「あーっ、もう何も言うな。わかってるから。ケイさんは、昔からお前のピンチに現れるヒーローなんだろ?」
源基は頭をガシガシと掻きながら大声で遮った。
「どういうこと?」
「気づいてないのか?」
何が?というようにキョトンとする小春を、源基はがっかりした眼で見た。
「おまえ、鈍感な上に記憶力も悪いんだな。何が取り柄なんだ?」
ひどいーっと怒る小春に、源基はハハハと笑いかけた。
「メシ、早くしてくれ。大盛りな」
わかったと言って、慌てて厨房に戻る小春の後姿を源基は優しい目で見ていた。
「源ちゃん、似た者同士はうまくいかないんだって」
春乃は源基の肩を軽く叩いた。
「どういうこと?」
「小春はとことん鈍い子だけど、源ちゃんもかなり鈍いってこと」
「意味わかんねえ」
「そのうちわかるよ。私にもチャンスが回ってきたみたいだし」
「何?怖っ」と怯える源基に、春乃はウインクをした。