可惜夜
世界が青い闇と静寂に包まれた頃、頬を撫でるような風に誘われて街に出る。いつもより遠くに見える夜景。広い河川に反射してゆらゆら揺れる街灯。頭上に広がる星空。「綺麗」や「美しい」なんていう単純な言葉では言い表せないこの世界。太陽が出ている時間とこの時間は世界が違う。もしかしたら君もこうして夜風に当たってぼんやりとしているのだろうか。そんな事を考えていると、またいつものように君の事で頭がいっぱいになる。大きく空気を吸って、体の底にあった鬱屈の居場所に違和感を感じる。ふぅ、、、と細く吐き出すけれど、気分は全く変わらなかった。空を見上げて、思い切り手を伸ばしてみる。
私が君を想う気持ちは、このぴんと伸びた手と、空に瞬くあの星のようだ。この想いは、いつでも私を苦しめる。同じ空を見上げられることだけが私の唯一の支えのはずなのに、大きくて広くて、思わず息を飲んでしまうこの空から目を背けたくなるのは何故だろう。
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