俺の側にずっといろ、生涯お前を守る
真山さんの言葉にドクンドクンと鼓動が大きくなった。

周りの音はかき消されて、その場に二人だけの錯覚に陥った。

真山さんの手が私の手に触れた。

その時、久崎社長があまりにもかえりが遅かった私を心配して下に降りてきた。

「まりえ」

社長に呼ばれて我にかえり「仕事に戻るね」そう言って真山さんの手からすり抜けた。

俺はなんて大胆な行動を取ってしまったのか。

まりえさんの会社の社長さんが迎えに来なければ、俺はまりえさんを抱きしめていた。

そしてキスもしていただろう。

十年間対象者に手を出してはいけないと頑なに守ってきたのに、それが依頼者に対して信頼されていたことなのに、俺としたことが、まりえさんに対する気持ちが、独占欲となってどうすることも出来ないところまで来てしまった。

でも、まりえさんは俺をどう思っているのだろうか。

はじめての相手を望んでいると言うことは、経験すればそれ以上は望んでいないと言うことか。

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