十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
10年。
これだけ長い年月は、感情も記憶も消えてしまうには十分の時間だ。
それなのに、たった数分の再会が私をあの頃に引き戻した。

彼の手が生み出す魔法にときめかない日はなかった。
そんな彼が手が、私の身体に触れる日を喜ばない日はなかった。
たった1つの出来事がきっかけで、当時幼すぎた私は彼と無理やり離れることを望んだけれど。

忘れたと思っていた。
忘れたかった。
だから、アクセサリーのことも興味がなくなるように、関係するものは全て捨てた。
私が遊びで描いた、将来の結婚指輪の妄想デザインも。
私が集めていた雑誌の切り抜きも。
彼に描いてもらった、数々のラフスケッチも。

「これ以上、理玖と一緒にいるのが辛い。しんどい」

そう、私が彼に告げた日に。
でも結局、そんな身を引き裂かれるような努力は無駄だと思い知った。

店を出てほんの数歩歩いただけなのに、また戻りたくなってしまうのだ。
もう1度、理玖を見たいと思ってしまったのだ。
理玖が生み出すアクセサリーを見たいと思ってしまった。
理玖との再会は、私にとってのパンドラの箱だったのだ。
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