十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
私と中野さんの話を、理玖は黙って聞いていた。
そして、全てを聞き終えた後、理玖はこう言った。

「そんな理由で、お前が、他の男との結婚指輪をつけるなんて、俺には耐えられない」
「理玖……!」
「だってそうだろ!?この男が、お前の事を俺以上に愛するって言うなら、俺は次に進める。でも……そうじゃないじゃないか……」

理玖は、私の両手を握りしめてきた。
中野さんと葉月さんが見ている前で。

「俺……この手を離したくない。こんな話を聞いたらなおさら」

お願い。
今、そんなことを言わないで。

せっかくの決心が鈍ってしまうから。

私の人生は、この人たちのために捧げると決めてしまったのだから。

「諦めようと思った。忘れようと思った。彼女が、本当に幸せになれるなら俺は身を引くつもりだった。ケリをつけるために、この指輪を作った」

そう言って、理玖が取り出したのは、あの日、私がデザインした指輪。
正直言えば、完璧に具現化するなんて無理だと思っていた程、繊細な細工が必要なデザインになってしまった。
でも、彼は完璧に作ってしまった。
私が理想とする指輪……星を。

「この指輪を美空にはめた日が、俺たちの本当の別れになる。だから、作るのをやめてしまおうかとも思った。この指輪ができなければ、美空とはまだ繋がり続けられる……。俺は、そんなことばかり考えるくらい、美空を愛している」

理玖が私を掴む手に、力が込められた。
汗がじんわりと伝わってくる。

「でも、あんたはそうじゃない。美空がどう言おうが関係ない。他の女との幸せのために、美空を犠牲にしようとした。それが俺には許せない」
「理玖、違う……!これは私が」

選んだ事だと言葉を繋げる前に

「君の言うとおりだな」

中野さんが、とても優しい声で言った。
葉月さんと手を繋いでいた。
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