十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
私は、いろんな感情で胸がぐちゃぐちゃになっていた。
中野さん、葉月さんへの申し訳なさと、優しさへの感謝。
そして何より……。

「理玖……本当にいいの?」
「何が?」
「私、もう1度あなたの側に戻って良いの?」

理玖は、私の左薬指にあのデザインの指輪をはめた。

「これ……!」
「お前、やっぱりサイズ変わってないな」
「どう言う事!?」

私が聞くと、理玖はいたずらっ子のように悪い笑みを浮かべた。

「10年前、お前に指輪をやろうとサイズ測ってたんだよ」
「嘘…………」
「それなのに、勝手に消えやがって……」

理玖は指輪をはめた私を、力強く抱きしめてきた。

「どう?」
「何が」
「俺が作った星……気に入ったか?」
「気に入らないわけないじゃない……」
「そうか」

理玖は、ぽんぽんと頭を撫でながら

「この指輪があれば、大丈夫か」
「何が?」
「親父さんへの結婚の挨拶。今から行くぞ」
「ちょ、ちょっとそれは……」
「どうして。6月までに結婚しないといけないんだろ」
「そ、そうだけど、でも……」
「でも何だ」
「さ、流石に昨日まで中野さんが婚約者だったのに、急に違う男の人連れて行ったら、お父さんびっくりしちゃうかも……」
「お前が別の男連れて俺の前に現れた時以上に、驚くことなんかないよ」
「それは理玖の場合でしょ!」
「とにかく!」

理玖は、私の口を1度キスで塞いだ後、今度は薬指の指輪にキスを落としてから

「10年。待たせたんだから、これ以上焦らせるな」

と言った。
私の目から、星のような涙がこぼれて指に落ちた。
< 59 / 89 >

この作品をシェア

pagetop