十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
そう。
指輪自体はほぼ完成している。
だが、最後の仕上げが残されていた。
それは、指輪の裏に、何を刻印するか、だ。
これは完全に私に一任されてしまった。
何を刻印するか、と言う内容だけではなく、刻印作業も。

理玖曰く

「1つくらい、俺が知らないサプライズがあった方が嬉しい」

とのことだったが、正直道具を使ったことは1度もないので不安しかない。
そのことを正直に伝えると

「美空は器用だから大丈夫」

と、頭を撫でられながら言われてしまった。
器用かどうかはともかく、せめてこれがまだ日常使いの指輪であったらまだプレッシャーは低い。
でもよりによって、初めての作業がよりにもよって結婚指輪。
プラチナを少し多めに使うデザインになったので、失敗した時に金額が怖すぎる。
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