十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
その後、理玖に説明を受けてから、何回か練習用の金属に試し打ちをさせてもらってから、いよいよ本番を迎えた。

まだ、頭の中でどんな文字を打とうかのビジョンすら、もやっとしている状況だった。
ちなみに、理玖が私の指輪にどんな文字を打ち込んだのかはまだ知らない。
参考にしたいから教えて欲しいと言っても

「後でのお楽しみ」

と何度もはぐらかされた。

どうしよう。
自分で言うことではないが、私は理玖ほど言葉で愛情を伝えるのは得意ではない。
だからこう言う時にどんな言葉を伝えればいいのか分からなかった。

愛しているだと安直だろうか?
自分の名前か、理玖の名前だけの方がいいのだろうか?
色々シミュレーションしてみるが、イマイチしっくりこない。

結婚指輪は、余程のことがない限り外すことはないものだ。
男の人は外すことも多いと聞くが、理玖は

「火葬直前で外されるまで絶対身につけたい」

と言ってくれている。
なので私は、どんな言葉を理玖にずっと身につけて欲しいか……と言う発想から言葉を考えることにした。
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