十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
結婚式の日からしばらく経った頃、私は急に体調不良に襲われて病院に行くことになった。
1人で大丈夫だと言ったのに

「絶対行く」

と理玖が私の手を掴んだまま離さなかったので、一緒に行くことにした。
でもそこで妊娠を告げられたので、一緒に行けて良かったのかな、と思うことにした。

「え?本当ですか?彼女の中に俺の子が……?」

と医師に何度も確認する理玖があまりにも可愛くて仕方がなかった。


「あ、子供服買った方が良いかな」

病院からの帰り道、理玖がそんなことを言い出した時には、我慢できずに吹き出してしまった。

「まだ3ヶ月にもなってないのに、気が早いんじゃないかな」
「何言ってるんだよ!残り7ヶ月なんて、あっという間に来ちゃう……。何から用意すればいいんだ?」
「落ち着いてよ理玖。ゆっくり、一緒に揃えていこう」
「そ、そうだよな……これから、一緒に考えていけるんだもんな」

理玖は、私の手をより強く握りしめた。

「あ、でも夫婦生活はしばらくダメですって言われたけど……」
「うっ……」

病院の先生から、真顔でセックスしないでねと言われた理玖の表情こそ、スケッチに残したかった。

「一緒に、耐えてくれるんでしょ?」
「………………善処する」

子供のように口を突き出しながら、ぐっと欲望を堪える努力をしてくれる理玖が、やっぱり可愛かった。

「その代わり……」

私は、理玖の手を私のお腹の上に誘導した。

「赤ちゃんのこと、一緒にいっぱい愛してね」
「当たり前だよ……」

理玖はそう言うと、人目を気にせず私に抱きついてきた。
今からこんなんでどうするんだろう……という呆れもあったが、それ以上に、この人と新しい家族を築いていける幸せを噛み締めた。
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