十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
「理玖!どうしたの!?」
「美空……!できた……できたよ……!」

理玖はそう言いながら、大きな音を立てて私に近づこうとしたので

「しっ、静かに」

と、娘がいることを教えてあげた。

「あっ……ごめん……」

理玖が口元を手で押さえながら謝る。

「大丈夫だから、静かにね」

私の言葉に、理玖はこくりと頷き、今度はそろりそろりと、忍び足で入ってきた。
それがまた、可愛くて私は笑ってしまった。
理玖は、私の横に座り、私を抱き寄せながら

「なかなか来られなくてごめん」

と謝ってきた。
私は首を横に振ってから

「大丈夫。赤ちゃんも一緒だったし……それに、私分かってるから。あなたがしてたこと」
「え?」

私は、理玖の前に左手を差し出す。
理玖は

「さすが俺の愛する妻だよ」

と言うと、私の手を取り、薬指にキスをしてきた。

「ちょっとマッサージしても良い?」

と理玖が聞き、私は良いよと答える。
理玖が、甘い香りのハンドクリームで、私の手を丁寧に揉んだり撫でたりしている内に、浮腫みがすうっと消えていく。

「これで大丈夫かな」

理玖はそう言うと、今度こそポケットに忍ばせていたリングケースを私の前に見せた。
私がその蓋を開けると、3つの指輪が納められている。
私はその3つの指輪の中に、明らかに小さい指輪を見つけ、やっぱりねと思った。
理玖は仕切りに、娘の指のサイズを覚えようと、何度も触れていたから。
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