俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「個人病院の産科って可愛らしいのねぇ。ここ本当に病院?浮かれ過ぎじゃない?子宮がん検診は総合病院だったからこんな所はじめてだわ」
レディースクリニックの中までついて来ちゃったけど。まさか、診察室の中まで入ってくるつもりなのかな。
「不妊治療ねぇ……排卵誘発剤、人工授精、体外受精、顕微授精…ふーん。今は女性6人に1人は不妊を疑うという統計データもあるものね」
愛奈さんが壁紙に貼ってあるポスターに目を向けて。病院の専門分野のチェックをしながら言葉を続けていく。
「理解できないなー。世界では一般化してきてるのにな。優秀な遺伝子の冷凍保存について」
「私も愛奈さんが理解できません」
私と彼女の温度差がある中。診察室のドアが開いて「鴨田さーん」と名前を呼ばれるから、慌てて返事をして立ち上がった。
「お連れの方も一緒にどうぞー」
「いや、この人は……」
「はーい!」
「4ヶ月入りましたけど、体調どうですか?貧血症状はあれから出ました?」
「いえ、大丈夫です」
「貧血でも症状がない場合もありますし、薬は飲み続けて下さいね。お腹の赤ちゃんのためにも」
診察室でベッドに横になり、先生がお腹に超音波機器のプローブを当てるとモニターに赤ちゃんがうつし出された。